2021.2.20(土)

復興支援の学生ボランティアから、10年。活動を「振り返り」見えた。その先のミライ 川原直也さん 前編

    

ライター T.Saito

何か新しいことをはじめている人、何かを発信している人。そういった人の多くは、何かしら自分なりの「哲学」を持っているように思えます。「自分が大切にしたい哲学」を考え、見つけることは新しいことを始めるときの手がかりになるのではないでしょうか。「いわてつがく」は、そんな思いのもと、さまざまなフィールドで活躍する人たちの「哲学」を紐解いていく連載です。

川原 直也 (かわはら なおや)

特定非営利活動法人 いわてGINGA-NET 代表
公立大学法人岩手県立大学大学院 総合政策研究科(博士前期課程2年)

活動内容
いわてGINGA-NETプロジェクト(学生ボランティア活動)、いわて学生ボランティアネットワーク事業(若者によるネットワーク構築支援)、いわてフィールドワーク・ラーニングプログラム(若者の人材育成支援活動)

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プロフィール:岩手県矢巾町出身。2014年岩手県立大学総合政策学部へ進学。入学後に学生ボランティアとして「いわてGINGA-NET」をはじめとした東日本大震災の復興支援活動に参加。2016年までは、いわてGINGA-NETプロジェクトとして、住田町を学生ボランティアの活動拠点に、岩手県内外からボランティア活動に参加できる仕組みを運営。現在は、岩手県立大学院の2年生であると同時に、代表として地域と学生同士をつなげるいわてフィールドワーク・ラーニングプログラム、いわて学生ボランティアネットワーク事業を企画運営。令和2年11月に、いわてGINGA-NETが内閣府の令和2年度「子供と家族・若者応援団表彰」において内閣府特命担当大臣表彰(子供・若者育成支援部門)を受賞。

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ーいわてGINGA-NETについて教えてください

当初は、岩手県立大学学生ボランティアセンターの在校生、卒業生、有志の教職員らが被災地域での復興支援活動に取り組んでいました。しかし、被災地は混乱した状況下でボランティアの受入れが難しく、全国の大学生も「岩手のために何かしたい」という想いがあっても、どう行動すればよいか分からない状況でした。そこで、何かできないかと方法を探していく中、沿岸部の隣接地域である住田町の方にご協力していただき、元は小学校で廃校になった町の公民館をお借りし、全国の学生ボランティアを受け入れる拠点を作りました。この受入れの仕組みがいわてGINGA-NETの始まりです。

2012年には学生・有志で継続的に活動していくために法人化しました。2016年までは、いわてGINGA-NETプロジェクトである復興支援事業、そして、2017年からはこれまでの活動から視点を変えて、岩手の若者にスポットをあてた活動を行いました。岩手の高校生と大学生が長期休みを活用して、夏は沿岸地域、冬は西和賀町へ行き、フィールドワークを通じて、地域の方との交流や地域課題を学ぶ事業を始めました。現在は、理事6人で、「いわて学生ボランティアネットワーク」やコミュニティカフェといった学生同士の情報交換の場や、研修会を企画しています。

いわてGINGA-NETプロジェクトで、岩手県内外からボランティア活動に集まった学生。

ー川原さんがボランティア活動を始めたきっかけとは?

東日本大震災が発生した2011年、私は中学3年生でちょうど卒業式の前日でした。これまで経験したことがない大震災が突然起きてしまい、非常に驚きました。何か自分にできることはないかと思い、勇気を振り絞って地元の社会福祉協議会へ行き、窓口で「何かできることはないですか?」と尋ねましたが、気持ちだけで大丈夫ですと返されました。当時の私は、知識もなく力不足で何もできませんでした。自分が住んでいる県のことなのに、何も関われないことに複雑な気持ちだったことを覚えています。

大学進学後、学内のフィールドワーク講義をきっかけに、初めて「被災地」と呼ばれる場所にいきました。そこで知り合った大学の先輩から、今のいわてGINGA-NETの活動を紹介していただき参加しました。被災地となった岩手に高知、島根、宮崎、アメリカの大学などから、多くの学生が復興支援のため、ボランティアに来ました。今まで、出会う機会がなかった方々の価値観や視点がその現場にあり、当時の私には非常に刺激的な体験になりました。

東日本大震災後、津波の爪痕を残した。旧大槌役場を見学する学生の様子。

ー学生ボランティアとは一体どんなことをされているのでしょうか?

被災地域は混乱状態で、被災された方自身も、先行きが見えない状況下にいます。そこで、何かできることがあれば、学生が現地に関わっていきます。しかし、専門知識を持って関わることができる人は専門性を発揮すればよいのですが、学生は学部に所属しているとはいえ、特にスキル・知識があるわけではないので、非専門的なボランティアとして関わっていきます。ピリついた現場では「何しに来た?」と強い口調で言われる場面に遭遇することがあります。地域の人のニーズに対して柔軟に対応できるのが学生の強みだと思うので、その場の状況に応じて、形を変えながら関わり方を考えています。全体のケア、地域に配慮して、一方的に押し付けがましい形ではないように、関係性を大事に私たちは活動しています。

活動を行う際、学生ボランティアの滞在拠点として、住田町の公民館をお借りしました。地元の方からすれば、よそから来た若者が一度にたくさん来て困惑されてしまう可能性もあります。私たちは地域の大切な施設をお借りしている立場でもあるので、自分たちの想いを理解していただけるように、住田町との関わり方を大切にしていました。その後、住田町のお祭りや、子供たちと遊ぶ交流会やイベントを一緒に運営し、地域との調整や学生のケアまで行うことができました。

学校の体育館に子供たちの遊び場を作り、ボランティア活動をしている学生たち。

ー団体活動で苦労したことなど教えてください

GINGA-NET以外の活動にも様々関わるようになってきた大学2年生の時に、別の活動で挫折を経験しました。団体活動していてよくあることだと思いますが、一人が突っ走りすぎて、周りがついてこないという状況がありました。沿岸地域のお菓子屋さんから、岩手のお菓子を集めて、全国の大学祭で販売する企画だったのですが、結果として2年で終わってしまいました。その時、自分一人で行う活動の限界を痛感しました。岩手を良くしたい、復興支援に貢献したいと思ったのですが、一人の力だと微々たるものだと大学2年生で気づきました。しかし、挫折した事で、発見したこともありました。一緒に関心を持ってやっていける仲間作りに興味関心が出てきました。GINGA-NETの活動に参加していく中で、岩手の若者が地域に目を向けるようにする活動をしていることに共感して、その後も活動に関わってきました。

ボランティア活動後の「振り返り」で学生たちが、感じたこと。

ー川原さんが思う、学生ボランティアの魅力とは?

本来ボランティアの形は、お互いに話し合い、すり合わせをしていく中で生まれると思います。しかし、ボランティアを行う、受けるという構図だとバッティングが起きてしまいます。やりとりを通じていく中で、最初の出会いとは違った意味合いの活動が生まれることが真のボランティアだと思います。そして、本当のむず痒いところに触れて、被災者がして欲しいことに対応できるのが、ボランティアの醍醐味だと思います。被災地支援は全国の学生が一堂に集まって活動します。ボランティア同士の初対面でのコミュニケーションや、自分ができないことを相手にお願いすることなど経験ができます。今まで普通に生活していて、出会わないような人と繋がるからこそ、さらに、自分自身を成長させてくれます。

大槌町の復興支援活動にて、学生ボランティアたちの想いを込めた土のう。

 

後編では、川原さんがボランティア活動で大切にされていること、今後のいわてGINGA-NETについて掲載します。

後編はコチラ

いわてGINGA-NET

住所    〒020-0866 岩手県盛岡市本宮5-10-20-120号棟

電話番号  080-6076-3580

 

 

 

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