2021.2.27(土)

復興支援の学生ボランティアから、10年。活動を「振り返り」見えた。その先のミライ 川原直也さん 後編

    

ライター T.Saito

何か新しいことをはじめている人、何かを発信している人。そういった人の多くは、何かしら自分なりの「哲学」を持っているように思えます。「自分が大切にしたい哲学」を考え、見つけることは新しいことを始めるときの手がかりになるのではないでしょうか。「いわてつがく」は、そんな思いのもと、さまざまなフィールドで活躍する人たちの「哲学」を紐解いていく連載です。

川原 直也 (かわはら なおや)

特定非営利活動法人 いわてGINGA-NET 代表
公立大学法人岩手県立大学大学院 総合政策研究科(博士前期課程2年)

活動内容
いわてGINGA-NETプロジェクト(学生ボランティア活動)、いわて学生ボランティアネットワーク事業(若者によるネットワーク構築支援)、いわてフィールドワーク・ラーニングプログラム(若者の人材育成支援活動)

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プロフィール:岩手県矢巾町出身。2014年岩手県立大学総合政策学部へ進学。入学後に学生ボランティアとして「いわてGINGA-NET」をはじめとした東日本大震災の復興支援活動に参加。2016年までは、いわてGINGA-NETプロジェクトとして、住田町を学生ボランティアの活動拠点に、岩手県内外からボランティア活動に参加できる仕組みを運営。現在は、岩手県立大学院の2年生であると同時に、代表として地域と学生同士をつなげるいわてフィールドワーク・ラーニングプログラム、いわて学生ボランティアネットワーク事業を企画運営。令和2年11月に、いわてGINGA-NETが内閣府の令和2年度「子供と家族・若者応援団表彰」において内閣府特命担当大臣表彰(子供・若者育成支援部門)を受賞。

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ーボランティア活動で大切にしていることは何でしょうか?

いわてGINGA-NETの活動で大切にしているのは、ボランティア活動で終わりではなく、「持ち帰る」ということです。活動に参加した一人一人が、自分の住んでいる地域や関わっている地域に戻った時に自分には何ができるのか考え、実行することを大切にしています。例えば、復興支援で携わった被災地のお祭りに、学生が運営を手伝うことで、これまで知らなかった地域活動の仕組みについて、視点が広がります。そして、地元に戻った学生が、街づくり、地域づくりなど、各地域で様々なアクションを起こして、活躍できる人がどんどん出てくればよいと思います。今は、まだ行動ができていないが、何か地域に貢献したいと思う人は、たくさんいると思います。うまく行動に移すきっかけがないだけだと思います。我々は、参加者の思いを吸い上げて、次の行動という形にできるようなプロジェクトを企画しています。これからも活動を通じて、参加者の興味関心をクリアにしていきたいです。

住田町のお祭りに地域住民と一緒に参加し、地域との交流を楽しむ学生。

ー東日本大震災から受け継がれた学生ボランティアネットワークとは?

災害は起きなければ良いですが、残念ながら毎年のように起きてしまいます。2015年関東・東北豪雨災害では、岩手の学生が現地の学生と協力しながら復旧復興支援を行いました。広島、熊本、各地での地震災害があった時、我々が行ったように地元の学生が、ホスト拠点を作りボランティアの受入体制を整えました。このように、色々な学生が集まって活動する仕組みが岩手だけではなく、色々な地域で反映されるようになりました。単体の災害復興プロジェクトは、これまでも各地に無数にありました。特に、2017年九州北部豪雨災害では、何かあったときに協力する学生ボランティアネットワークの仕組みが引き継がれました。これが、福岡県うきは市の「大学生災害ボランティア支援センター(うきはベース)」です。かつて、いわてGINGA-NETの活動に参加した学生・大学職員が、その経験を地元での活動に役立てました。

浸水してしまった床下から泥を取り除く、学生ボランティア活動の様子。

ー復興支援活動から10年、活動が内閣府から評価された経緯とは?

これまでの東日本大震災における学生ボランティアの復興支援活動の経験を活かし、県内の高校・大学生とともに、フィールドワークを行い、地域文化、歴史的な学びを伝えていく人材育成事業を行ったことや、平常時からの学生のネットワークづくりの展開が評価されたと思います。そして、いわてGINGA-NETとして、いわて若者文化祭、いわてネクストジェネレーションフォーラムにも参加しました。今年で10年目という節目で内閣府の令和2年度「子供と家族・若者応援団表彰」における内閣府特命担当大臣表彰(子供・若者育成支援部門)を受賞できたと思います。

これまで私たちが、災害時の学生ボランティアの受入れ体制や、全国の学生ボランティアネットワークの仕組みを作ってこられたのは、いわてGINGA-NETを支えてくれる様々な協力者、大学、卒業生や地域の方のおかげです。そして、今回このような形として評価されたのは、関わってくれた方々への恩返しになったと思います。

いわてGINGA-NETが、10年活動してきた復興支援・若者育成支援活動が評価され受賞。

ーいわてGINGA-NETがチャレンジすることを教えてください

今までは、学生の活動を中心にしてきましたが、これからは、学生を支える人たちの環境を作りたいです。具体的には、卒業生を対象に若者支援ネットワーク作り、若者の活動を応援する仕組みづくりを計画しています。大学生は、時間と熱量はあるのですが、一般的にお金と交通手段がないと言われています。例えば、活動のため釜石への移動手段として、電車とかバスでもいいですが、誰かに車を出してもらってサポートしていただけたらと思います。また、GINGA-NETの卒業生で現在は消防士の方が、西和賀でのスノーバスターズの活動で、雪下ろしのため屋根にのぼる際には、消防士の立場から安全のため的確な指示をしていただいています。このように活動を通じて、専門的な立場から学生を支える環境も作りたいです。

他には、学生に限ったことですが、盛岡と滝沢に大学が集中しているので、学生が他の地域に興味を持つきっかけを作りたいです。各市町村で若者支援を行っている団体とうまく連携しながら、様々なイベントを企画し、アクセスできる環境を整備していきたいと思います。そして、最終的にいわてGINGA-NETが「岩手県学生ボランティアセンター」とも呼べるような役割を担えたらと思います。

フィールドワークで西和賀町のスノーバスターズとして、屋根から雪下ろしする若者。

ーこれから新しいことに挑戦する若者へ

いわての若者、全国の若者にメッセージを!

将来の夢に対しての助言として、やりたいことをやればよいと、答える人がいると思います。しかし、そもそもやりたいことがわからない、経験したことがない若者に対して、何がやりたいことなのか、なんて正直わからないと思います。自分がやりたいことをやるのは大切なことですが、様々チャレンジして経験を増やすことが一番大事だと思います。自分が経験したことから選ぶことで、自分の道が見えてくると思います。私としては、参加した若者がやりたいことを見つけるために、幅広くチャレンジできる機会を増やしていきたいです。

復興支援とフィールドワークで地域に溶け込む学生の様子。いわてGINGA-NET HP引用。

いわてGINGA-NET

住所    〒020-0866 岩手県盛岡市本宮5-10-20-120号棟

電話番号  080-6076-3580

 

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