2019.3.27(水)

「自分がつくるものは、自分の意思が通った生きているものでないといけない」長谷川 順一

    

取材対象者:長谷川 順一さん

取材対象者プロフィール:長谷川 順一(はせがわ じゅんいち)

岩手県陸前高田市出身。大学進学を機に埼玉県で過ごした後、2004年にUターンし、家業である長谷川建設株式会社に入社。2008年、代表取締役に就任。他にも宿泊・滞在施設「箱根山テラス」を運営する株式会社箱根山テラス代表取締役、一般社団法人高田暮舎理事を務める。

 

何か新しいことを始めている人、何かを発信している人。そういった人々の多くは、何かしら自分なりの「哲学」を持っているように思えます。「自分が大切にしたい哲学」を考え、見つけることは、新しいことを始めるときの手がかりになるのではないでしょうか。

「いわてつがく」は、そんな思いのもと、岩手県出身のさまざまなクリエイターの「哲学」を紐解いていく連載です。

 

第3回目は、長谷川建設株式会社代表取締役の長谷川順一さんにお話を伺いました。陸前高田市に拠点を持ちながら、建設業や宿泊業、バイオマスエネルギー、移住定住促進など様々な分野に携わっている長谷川さんはどんな想いをもって活動されているのでしょうか。

まちの人たちの笑顔をどうしたらつくれるか

——長谷川さんがどんなことを大切にしているか教えてください。

大切にしていることは、「笑顔」ですね。自分の笑顔もそうだけど、まわりの人の笑顔や陸前高田市で暮らす人たちの笑顔がどうしたらつくれるか。

 

——まわりの人達の笑顔をつくるために活動している。

きっとそう考えているのは、東日本大震災の影響を少なからず受けていると思います。震災直後、地元の人達は、心から笑える機会が少なかったり、笑ってはいけないような雰囲気の中で過ごしていました。それから、自分の身の回りにいる人たちの笑顔をどうつくれるかを意識するようになりましたね。

 

——陸前高田市の人たちを勇気づけたいような気持ちがあったのでしょうか。

笑うこととか、楽しげな雰囲気のある場所が必要だと考えたんでしょうね。例えば、何か会議をしている時でも、その場の雰囲気が硬いと「何まじめにやってんだよ」とか言っちゃうんです。堅苦しい会議よりも、みんなが意見しやすいようなフリートークに近いリラックスした状態の方が良い案が生まれると思う。当然まじめにやらないといけない時もあるから、その時はその時でいいんだけど、真剣にやるっていうのはまじめにやることだけではないんじゃないかな。

 

ひとりひとりが自立したチームづくり

——長谷川さんは、場の雰囲気とか、まわりの人達に意識が向いているんですね。

そうですね。自分の得意技はチームを作ることだと思っています。誰かと話をしている時に、自分と同じような感覚を持っている人と出会うと「こう思ってたのは俺ひとりじゃなかったんだ」と思って行動するやる気が出て、よし一緒にやろうとなる。自分ひとりでできることなんて、たかが知れてるので、そうして仲間を集めることが重要です。で、チームをつくる上で大事にしているのは、自分が出すぎないようにすることです。

 

——長谷川さんの意志を出さないということですか?

まったく出さないわけではありません。どうしてもチームを作ると親分が生まれるでしょ?親分ってある程度は必要ですが、親分の意見に周りが振り回されるとみんなが疲れていってしまうんですよね。だから迷わないために、活動の方向性は決めるけど、そこに向かう手段や方法は自分が出すぎるんじゃなくて、他のメンバーの意見や考えにゆだねて進んでいく。

 

——誰かひとりの意見が強い場よりも、チーム全体でひとつのものをつくっていく雰囲気のある場というか。

絶対その方が面白いよね。メンバー全員が自立してるというか。みんなと協力する意識は持ちながらも、それぞれが常に自分の意見は持っているチームが理想です。

 

——確かに、個々が強い意志を持っているチームは活発な印象を受けます。

もっと言えば、一番最高なのは、常に一緒に行動するのではなくて、普段はばらばらに生活していても、何かフラグが立った時にみんなが集まって活動できるようなチーム。誰かが大変な時に「みんなで助けてやろうぜ」みたいなチームって、そこに所属することが心地いいんだろうなって思うんです。

 

自分のつくったものに「ナイフを刺したら血が流れるか」

——長谷川さんは大学に進学するときや就職をする時は、家業を継ぐことを意識していましたか?

そうですね。小学校に入る前あたりから、俺はこの会社を継ぐことになるんだなと思ってました。それに対しては何の違和感もなくて。それぐらい、創業者である祖父が上手だったんでしょうね。祖父には、小さい頃から、「建物を造ったり、道を造るだけが建設屋の仕事ではなくて、『人の命』を守ることが大事だ」ってことをずっと言われ続けて育ってきました。

 

——長谷川さんは長谷川建設の代表取締役を28歳の時に就任されたと聞きました。

はい、そうですね。その頃は、どんなことをしたらいいのか、右も左も全くわからない状態で。就任したその翌年から半年間、経営の勉強会に通い始めました、その時にお会いした講師の方からの言葉を今でも強く覚えていますね。

 

——どんな言葉をかけられたのですか?

勉強会の中で、自分が経営計画書を作って、その講師の方に提出したら、「お前が作ったこの計画書にナイフ刺したら血は流れるか?」って聞かれたんですよ。「そうだよな。自分がつくるものは、自分の意思が通った生きてるものでないといけないよな」って、ズシッと重みを感じて。その言葉を今でも大切に、自分が立ち戻る原点のようなものになっています。

 

——「ナイフを刺したら血が流れるか」。確かに言葉の重みを感じます。

見た目のいいキレイな文言が並んでいるだけの計画書は全然意味がなくて。ナイフを刺したらその人の血が出るぐらい、本気でその書類をつくったかどうかとか、それくらい意志をたっぷり注いだかが大切だと思うんです。それは書類だけの話ではなくて、どんな仕事でもそうして人の血が流れている感じが伝わってくるようなものが好きですね。

 

どういうまちを次の世代に残していきたいか

——長谷川さんは長谷川建設の他にも、様々な法人に関わりを持って活動されていますが、それだけ強く陸前高田市のために活動する想いはどこからきているのでしょう。

うーん、そうですね。まず、誰かに褒められたいから、何かをしているっていうことはないです。ただ、100年後、200年後にこのまちで暮らしている人たちから褒められるようなことはしていたいなと思っています。っていうのも、俺がやろうとしていることって、このまちの人たちのライフスタイルを変化させるとか、バイオマスエネルギーを推進するとか、どうしても結果が出るのに時間がかかるものが多いんですよね。どれもすぐに実現するのは難しいことばかりですが、どういうまちを次の世代に残していきたいかと考えながら活動しています。

 

——まちをよりよくしようという想いが感じられてくるのですが、今の陸前高田市の状況には満足していないのですか?

そうですね。不満足です。もっとたくさんやれることがあるなと思っています。もちろん、それはまちのことだけじゃなくて、自分のことでもそうで。今している活動が、本当に全力尽くしきれたのか、どこか守りに入ってたんじゃないかなとか。現状に満足することはあまりありません。そうして「俺はまだ知識不足だったな」ってときには旅に出たりしますね。

 

——旅に出る?

先進的な成功事例があるまちを訪れて周ります。話を聞くだけではなくて、実際に訪れないとわからないまちの空気感を味わうために旅をしますね。旅に出ることが自分にとっては勉強するために本を読むような感覚に似ています。

 

——そうした向上心があるからこそ、積極的に活動することができているのかもしれませんね。最後に岩手の若者にメッセージをお願いします。

今この記事を見てくれている人たちがこれからの岩手や日本をつくっていく人たちなのだと思います。きっと、現状に不満を抱くこともあるかもしれないけど、今の自分を作っているのは、結局過去の自分なので。もし今の自分に満足していないのであれば、後悔するだけではなくて、未来をよくするために、まずは今の自分を変えることが必要です。人から言われたことを真に受けて、「こうかな、こうかな」となんとなく確信のないまま、自分に色をつけすぎずに、どんなことも吸収できるような柔軟な考え方を身につけてもらえたらなと思います。

 

集後記

インタビュー中の言葉や写真から伝わるように、長谷川さんは、一緒にいるだけで、その場を楽しく感じられる人。「自分の得意技はチームを作ることだと思っています」と話すとおり、話を聞いているうちに長谷川さんと「一緒になにかしたい!」と気持ちが盛り上がってくる感覚も受けました。その楽しげな雰囲気ができているのは、長谷川さんが「どんな場をつくるか」を意識した立ち振舞を行っているからこそ。これからも長谷川さんは仲間ひとりひとりが自立して行動できる雰囲気をつくりながら、周りの人達の笑顔づくりに励んでいきます。

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