2020.10.28(水)

遠野ホップで新たなチャレンジを、移住・起業から生まれたクラフトビール    袴田大輔さん

    

何か新しいことをはじめている人、何かを発信している人。そういった人の多くは、何かしら自分なりの「哲学」を持っているように思えます。「自分が大切にしたい哲学」を考え、見つけることは新しいことを始めるときの手がかりになるのではないでしょうか。「いわてつがく」は、そんな思いのもと、さまざまなフィールドで活躍する人たちの「哲学」を紐解いていく連載です。

袴田 大輔 (はかまだ だいすけ)

株式会社 遠野醸造 代表取締役

事業内容:自社クラフトビール製造
     醸造所併設のパブ遠野醸造TAPROOM運営

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プロフィール:青森県出身。大学時代に世界30カ国を旅して、訪れた地で様々なクラフトビールに出会う。新卒で就職した大手アパレルメーカーを退職後、ビールへの情熱が忘れられず、自身でクラフトビールを生業にしていくことを決める。各地で修業した後、ホップの里である遠野市でクラフトビールと地域食材を味わえるお店、遠野醸造TAPROOMを設立。

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ー遠野に来る前の袴田さんは?

私は2012年新卒で大手アパレルメーカーに入社しました。仕事内容は洋服の販売をはじめ、店舗運営や従業員のマネジメント、新店舗の立ち上げなどを行いました。

30歳を前に洋服の大量生産、大量消費で廃棄されてしまうことに対して虚しさを感じることや、小さい規模でも密にお客様と良質なコミュニケーションを取りたいと思うことが増えてきて、30代以降の人生について様々考えるようになりました。「自分の手で何かを作り、お客さんに直接届けるような仕事をしたい」と考えていた時、学生時代から好きだったビールが頭に浮かびました。そして、自分の手でビールを作るため、ビール業界に転職を決め、横浜のビール会社で働いていました。

ー遠野で起業した経緯とは?

横浜のビール会社で働いた当時、ホップの産地である遠野市でローカルベンチャー事業の起業家募集があり、とても面白そうだなと思い応募しました。地域資源であるホップを活かした事業プランを行政にプレゼンし、2016年9月に地域おこし協力隊として正式に採用していただきました。着任してからは遠野の街にどのようなブルワリーを作れば良いのか、設備はどうしようかなど常に考えを巡らせながら準備を行い、ようやく2017年の11月に念願だった遠野醸造を設立することができました。

遠野醸造の外観画像。遠野駅から徒歩3分。

ー移住してからの活動について教えてください

私は遠野に移住してきた身ですので、親しい友人もコミュニティもゼロからのスタートでした。まずは、私たちの活動を知ってもらえるよう様々なイベントを企画し、ビールについて知ってもらう機会を作ろうと考えました。例えばホップ畑での作業体験を企画した際には、地元の方がたくさん参加してくださいました。遠野に住んでいても初めてホップの作業体験をしたという方が多く、近すぎると知らないという地域の声を聞くことができたのは大きな収穫でした。その後も、ビールに関連する様々なイベントを企画することで、地域の方に私たちの活動を理解していただき、徐々に私たちを応援してくださる方が増えていきました。

ー店舗をオープンして、どのようなことに挑戦してきましたか?

現在、ホップ農家さんや様々な地域の事業者さんと一緒にコラボしながら、年間約25種類のクラフトビールを造っています。繋がりを活かしたビール造りができるのは、遠野だからできる事だと思います。また、遠野には様々な地域食材があるので、それらを活かしたメニュー開発を行っています。遠野醸造TAPROOMでは食事との相性に合わせて、ビールとのペアリングも楽しんでいただくことができます。

また、SNSを利用してお客さんとダイレクトにコミュニケーションをとりながら、来てくれるお客さんがまた来たいと思ってくれたり、お店を誰かにオススメしたいと思ってくれるようなサービス、料理のクオリティを高めることに注力してきました。大きな広告はできませんが、小さいなりにできるダイレクトなコミュニケーションやリアルな繋がりを大事にしています。これからも地域に必要とされるお店になれるよう、日々の営業を頑張りたいと思います。

店内では常時6種類の樽生ビールがお楽しみいただけます。

ー改めて思う、クラフトビールの魅力は何ですか?

個人的には自由さと多様性があるところが魅力です。ビールの原料は、麦芽、水、酵母、ホップの4つです。そこに副原料が幅広く使用できます。例えば、陸前高田の生姜、紫波のラ・フランス、遠野の白樺樹液など、地域の素材を活かし、自由な発想で表現できるのはクラフトビールの魅力の一つだと思います。

またビールには100以上のスタイルがあります。ビールが苦手な人でもどれかしら好みに合うビールがあると思います。その懐の深さや味の多様性がビールの良さだと思います。そして、クラフトビールの作り手も様々なバックグランドの人がいるので、多様性を歓迎してくれる風土がとても素敵ですね。

「SOUTHERN HAZY IPA」 ホップを通常の4倍使用したクラフトビール。

ー遠野醸造がこれからチャレンジすること

現在、私たちは瓶詰めや缶詰をできる設備を持っていないため、基本は樽生でビールを提供しております。そのためお店に来ないと私たちのビールを楽しめないというのが課題となっています。

その課題をクリアし、より多くのお客様に私たちのビールを届けるため、缶詰機を導入し、店頭やオンラインショップで缶ビールを販売していきたいと思います。完成まで楽しみにお待ちください。

(株)遠野醸造設立メンバー。

ーこれから新しいことにチャレンジする若者へ

いわての若者、全国の若者にメッセージを

新しいことを考えて実行に移そうとすると、できない理由ばかり考えてしまうので、まずは行動してみましょう。

ビールをつくってみたいのであれば、どこかの醸造所へ行って体験させてもらうなど、一歩踏み出すことが大事です。失敗しても死ぬことはありません。

「BEER TOGETHER!」のオリジナルTシャツを着る袴田さん。

 

遠野醸造TAPROOM   

住所    岩手県遠野市中央通り10-15

電話番号  0198-66-3990

営業時間  月・水・木・金 17:00 – 22:00 土・祝 12:00 – 22:00 

      日 12:00-21:00

定休日   火曜日

 

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