【拠点情報】
所在地:久慈市二十八日町2-21
営業時間:10:00〜20:00 (月、水、木、土)10:00〜18:00(金、日)※火曜日定休
◎ 久慈駅から徒歩5分、道の駅やませ土風館の少し手前に位置する「NANAMARUNI COFFEE」。木製風の外壁がおしゃれな建物に、「702」の部屋番号プレート。友達の部屋に遊びに行くような感覚で、一息つける場として賑わっています。
【お話を聞いたのは】
◆ NANAMARUNI COFFEE オーナー 嵯峨 恒宏 さん
久慈市出身。宮城県へ転出後、地元を盛り上げたいという思いからUターンし、カフェをオープン。カフェを運営しながら、若者と地域をつなぐ活動として様々なイベントを企画しています。
◆ 合同会社プロダクション未知カンパニー 代表社員 藤織 ジュン さん
東京都出身。舞台俳優やナレーターとして活動後、久慈市の地域おこし協力隊を経験。現在は三陸ジオパーク認定ガイド、久慈市移住コーディネーターを務めています。海女のジュンちゃんグッズも販売中。
【NANAMARUNI COFFEEができるまで】
ー 最初に、この場所ができた経緯を教えてください。
嵯峨さん(以下、嵯峨) 私は久慈市の出身で、その後宮城県に転出しました。最初は仙台市でカフェを開いてみたい、という思いがありました。その時期、たまたま栃木県のとあるカフェを訪れることになりました。いわゆる「田舎」にあるカフェだったのですが、その周辺にはいくつか新しいお店が並んでいまして。どうしてこんなところに新しいお店が軒並み建てられたのか、疑問に思ったんです。
ー 確かに、新しいお店が並んでいる光景が田舎で見られるのは珍しいかもしれません。
嵯峨) そこで、その新しいお店のスタッフの方々に聞いてみたんです。「どうしてこんなところにお店を開いたんですか」と。
ー 単刀直入に聞いたんですね!
嵯峨) 当時はまだ「地域おこし」や「地域づくり」といった言葉に、ほとんど知見がありませんでした。単純に興味があって、思い切って聞いてみたんです。すると、皆が口を揃えて「あのカフェができたから、近くで自分たちもお店をやってみようと思った」と答えました。その時、「自分がやりたいのはこれだ!」という思いが全身を貫きました。
ー なるほど、そのカフェを中心にして、地域の賑わいが生まれたんですね。
嵯峨) 震災のこともあったので、地元である久慈市にカフェを開いて、久慈市の賑わいのきっかけづくりができたら良いな、という思いが生まれました。私が「地域おこし」を意識するきっかけになった出来事でした。
▼ドライフラワーがあしらわれた店内。海外ビンテージ風のインテリアかと思いきや、空き家バンクの運営関係の方から譲られたMADE IN JAPANの家具を使っているそうです。
【NANAMARUNI COFFEEってどんなところ?】
ー こちらはどんな方が利用しているのですか。
嵯峨) 普段はカフェということもあり、地元の高校生から年配の方まで、幅広い年齢層の方に来店していただいています。週末になると、遠方からいらっしゃる方もいますね。宮古市、八戸市の方が多くいらっしゃいます。
藤織さん(以下、藤織) 私は自身の会社のセカンド事務所のような感覚で、こちらを利用させてもらっています。人が集まってくる場なので、プロジェクトなどを考える時にはこちらで活動した方がスムーズです。
ー カフェとしても、活動の場としても、多方面から人が集まってくるんですね。
嵯峨) そうですね。最近だと東京からいらっしゃった方がいまして、今ではすっかり常連です。その方とお店を使ったプロジェクトを計画中です。
ー 生活圏が離れていても、久慈で何かをしたいと思ってもらえたのは嬉しいですね。
嵯峨) 他にもこのカフェから生まれたエピソードを紹介すると、15年ほど前に撤退した「ユベントス」というカフェが近くにありまして。撤退後、看板などもそのまま残った状態で、放置されていた物件でした。このNANAMARUNI COFFEEに集まった仲間で、そのカフェをDIYで再生させ、再び「ユベントス」としてカフェをオープンさせました。1つの物件をDIYで改修するのはとても大変でしたが、そのDIYのメンバーが現在「ユベントス」のオーナーを務めていて、現在も久慈市の地域おこしに積極的に携わってくれています。
ー この場所で集まった仲間が、各々で地域おこしの波を起こしているんですね。
嵯峨) 久慈市内や近郊の地域おこし協力隊が着任すると、この店に挨拶に来るのが風習になっているみたいです(笑)。
藤織) このカフェに来ると、人との繋がりが生まれると思ってくれているんですよね。それがとても嬉しいです。
ー 人々をつなぐ共通の話題として、提供されているコーヒーについてもお聞きしたいです。コーヒー豆にこだわりはありますか?
嵯峨) コーヒーについて詳しい方もそうでもない方も楽しめるよう、選べる5種類のコーヒーを置いています。飲みやすいブレンドコーヒー、苦味を楽しむ深煎りのコーヒー、フルーティーな味わいの浅煎りのコーヒー、ブレンドコーヒーでは物足りない方向けの味のバランスが整ったコーヒー、そして月替わりのマンスリーコーヒーの5種類です。
ー 様々な味が楽しめるのも魅力ですね!他にも、スイーツも楽しめるんですよね。
嵯峨) はい、スイーツも作っています。先日、「巽市(たつみいち)」との同時開催で「SWEETS MARKET」もこのカフェで行いました。県内外の人気のスイーツ店をお呼びして、大盛況でした。
▼小久慈焼きのコーヒーカップ。お店の名前が刻まれている、ここにしかない特別な品。
▼ レジカウンターにはスイーツが。これらも全て嵯峨さんが手がけています。
ー 「巽市」とはどんなイベントですか?
嵯峨) このカフェ近くにある巽山神社で、毎年お祭りが行われているのですが、もっと盛り上げてほしいというお話が入ってきまして。このカフェに携わる若者たちが実行委員として立ち上がり、企画したものです。出店はもちろん、古着を裁断して保育園や学童の子供達に絵を描いてもらい、鯉のぼりにして飾りました。
ー 子供も大人も楽しめるイベントだったのですね。こちらのカフェでは、DJやダンス、弾き語りなど、音楽イベントも多数企画されていますよね。
嵯峨) 実は「音楽」は、久慈の人々にはあまり振り向いてもらえないコンテンツなんです。我々が音楽イベントを企画するようになったきっかけは、ハイレベルなダンサーが久慈市在住だったこと。プロのダンサーも目をつける程、とてもダンスが上手な方なのですが、その方にこのカフェで踊ってもらったんです。
藤織) そのダンスがきっかけで、音楽に携わる人々と関わるようになり、イベントも行うようになりましたね。今では市民センターで音楽イベントを行うようになりました。私は司会として参加しましたが、久慈市にこういったイベントが浸透してくれた感覚がありましたね。
▼ 取材同日、若者カフェの連携拠点を示す看板の除幕式が行われました。さらにたくさんの物語が生まれていく予感。
【久慈市のこれからについて】
ー 久慈市の今後はどうなっていくと感じていますか。
嵯峨)このカフェに集まり、地域おこしで繋がった仲間は、それぞれが「何かをやってみたい」とは思っていても、背中を押してあげないと動き出すことができないケースが多かったんです。しかし最近、自ら行動を起こすことが増えてきたと感じています。これからはそれぞれが中心になって、たくさんのムーブメントが起きていくと確信しています。
ー このカフェにはクリエイティブな方々が集まって来るんですね。
藤織) 我々の親世代は、「田舎」と呼ばれるような場所に残らなければならない事情があった人も多い世代なので、どうしても「田舎」をネガティブに捉えがちです。しかしその後の世代は、好きにやって良い、「都会」「田舎」どちらを選んでも良い、という選択肢を与えられた。そうやって次第に「田舎」=ネガティブというイメージは希薄になり、現在は「田舎」の方がクリエイティブになれる、というポジティブイメージに変換されつつあると思います。その拠点としてこのカフェがある、ということはとても誇りですね。
ー 活動のきっかけとなった栃木県のカフェと同じ現象が起きつつありますね。地域の垣根を超えて人々が集まる理由がよくわかりました。今後の活動にも注目しています!本日はありがとうございました。