2023.3.8(水)

地域のみんなで育てていく ユースセンター 上田彩果さん

    

何か新しいことをはじめている人、何かを発信している人。そういった人の多くは、何かしら自分なりの「哲学」を持っているように思えます。「自分が大切にしたい哲学」を考え、見つけることは新しいことを始めるときの手がかりになるのではないでしょうか。「いわてつがく」は、そんな思いのもと、さまざまなフィールドで活躍する人たちの「哲学」を紐解いていく連載です。

上田 彩果 Ayaka Ueda

NPO法人 SET 交流部

コーヒージャンキーウエダ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

プロフィール:東京都町田市出身。立教大学文学部史学科卒。2017年4月学生時代に学生ボランティアで関わっていた岩手県陸前高田市広田町へ移住。その後、NPO法人SETのメンバーとしてキャリア教育事業に従事。2021年4月岩手県岩手郡岩手町に移住し、空き店舗をリノベーションして6名でシェアハウス生活を開始。翌年秋から同施設にて、自家焙煎珈琲豆屋コーヒージャンキーウエダを営んでいる。現在は、岩手町で若者の居場所を目指した「ユースセンター」のオープンに向け準備中。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ー初めて東北を訪れたきっかけは

私は元々、海外文化や文化人類学を学び、将来は世界史の教師になることが夢でした。

東北を訪れるきっかけとなったのは、海外旅行中に出会ったおばあちゃんから東北のことを聞かれた時、それまで東北地方には訪れたことがなく何も答えられなかった自分が情けなくなって「帰国したら東北に行こう」と思ったことです。

大学1年生の時にSNSでNPO法人SETが募集していた被災地での学生ボランティアに参加し、1週間ほど陸前高田市広田町に訪れました。

人のために行動することを目標としてボランティアに参加しましたが、活動期間が決まっている中で何もできない自分の無力さを痛感しました。

この体験が私の価値観を変え、今の活動だけでなく、その後の夢や目標にも繋がっていると感じています。

ー東京から陸前高田市に移住した理由とは?

「被災」という前途多難な状況に置かれながらも、前を向いて生きていく陸前高田市の人たちの姿を目の当たりにして、この地域に貢献したいという思いが芽生えました。

そこで、2014年4月に現在の社会教育事業の前身である「高田と僕らの未来開拓プロジェクト」を立ち上げ、大学を1年間休学して陸前高田市での活動に専念しました。

当初は大学卒業と共に活動を終了する予定でしたが、自分自身が地域に入り込み、様々な活動を経験する中で、陸前高田市で活動を続けたいという思いが強くなり、2017年3月に大学を卒業した後、陸前高田市に移住することを決めました。

その後、NPO法人SETの職員として、小中高校の地域コーディネーターとして地域と学校をつなぐ役割を担当し、4年間にわたってキャリア教育事業を続けてきました。

陸前高田で活動していた頃の上田さん(真ん中)

ーそして、今岩手町に活動の拠点を移されていますが、経緯を教えてください。

これまで、NPO法人SETでは、陸前高田市で中高生が関東圏の大学生と一緒に地域の未来を考え、自分の将来を見据えて地域でプロジェクトを行っていく小中高大のキャリア事業を行ってきました。その活動の中で、岩手町から若者育成やまちづくりに協力して欲しいと声をかけられました。

NPO法人SETには、「やりたい」という気持ちを「できた」という成果に変え、日本の未来に「Good」な「Change」をもたらすことをミッションとして掲げています。また、基本的に仲間やスタッフがやりたいことは、みんなで応援していくという風習があります。

私自身も何か新しいことにチャレンジしたいと考えており、地元の人と私のように外部から来た人が一緒に新しい取り組みを行うことで新しいまちづくりにつながり、様々な交流を活性化させることで岩手町を盛り上げたいと思ったことが、岩手町に来たきっかけです。

岩手町に移住した時に撮った写真

ー若者の居場所「ユースセンター」とは?

岩手町で中高生の人材育成事業を進める中で「放課後に集まれる場所が少ない」「もっと気軽に地域での活動を相談できる場所が欲しい」という中高生の声を聞きました。そこで、若者が学校帰りや休日に気軽に立ち寄れる居場所が町には必要だと感じ「ユースセンター」を考えました。

この「ユースセンター」は、訪れた人々のコミュニティだけでなく、これまで面識のなかった若者と大人がコミュニケーションを通じて困りごとを解決したり、地域全体で夢を実現したりすることができる場所を目指しています。

2022年9月17日にプレオープンし、グランドオープンは2023年3月12日に予定されています。1階に地域の方々と交流できるスペースを設け、2階には一人で集中して勉強や作業ができる場所を考えています。

「ユースセンター」は地域の人々と一緒に育てていく場所でもあります。そのため、地域の人々や訪れる人々にも知っていただき「この場所があって良かった」と思っていただけるよう、積極的に情報発信を行って、この場所が若者と地域の交流拠点となることに繋がればと考えています。

ユースセンターでの活動風景

ー岩手町に移住して、発見した魅力を教えてください。

徒歩圏内に美術館があることは、この町の魅力の一つだと思います。

私は散歩するのが日課で、時には週2回も石神の丘美術館や隣にある道の駅に行きます。石神の丘美術館では、アートに触れながら季節の変化を感じることができます。このように、田舎でアートを楽しめる場所はあまりないかもしれません。

また、岩手町では10月に地元の秋祭りがあります。地域での暮らしを充実させるため、その時期は太鼓の練習に参加しています。少しずつ地域の行事に参加しながら、地域の一員として溶け込んでいきたいと思っています。

ー最後に、何か新しいことへ挑戦しようとしている岩手の若者へメッセージをお願いします

私が伝えたいのは「やってみたいことを実際にまずやってみて欲しい」です。

早い段階から、将来の夢を一つに決めるのではなく、自分ができそうなことから挑戦することが大切だと思います。

やり方がわからない、できないかもと思った時は周りの人に相談してみてください。岩手には、必ず力になってくれる人がいます。

以前「百姓の仕事」という言葉が地域づくりで注目されていましたが、私も岩手に移住してから、キャリア教育事業や、珈琲屋など目の前のやりたい事にチャレンジしています。

これからの時代は、一つの職業に拘るのではなく、様々な仕事を掛け持ちしていくことで、地域で夢を実現しながら暮らすことができるのではと思います。

岩手町で知り合った友人たちとの様子

投稿:Co.Nex.Us運営