2017.2.21(火)

タイトル「いわてびと」

〜 番外編その15  真逆な二人が醸します!! 葛巻町/葛巻高原食品加工株式会社 前川 貴生さん、小野寺 望さん 〜

    

いわてで活躍するいわての若者や団体を紹介する「いわてびと」めっけ!

※「めっける!めっけだ!」は、岩手県など東北地方の方言で「見つけた!」「発見!」という意味。

番外編では、いつものコネックさんではなく、岩手県庁の若手職員が若者を取材しています!
葛巻町に移り住み、くずまきワインを製造している前川貴生さんと小野寺望さんをめっけ!

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左:前川さん / 右:小野寺さん

 紫波町出身の前川 貴生(まえかわ たかお)さんは2015年4月から、気仙沼出身で大船渡市育ちの小野寺 望(おのでら のぞみ)さんは2016年4月から、葛巻町の葛巻高原食品加工株式会社(以下、くずまきワイン)に勤めていらっしゃいます。移住のきっかけ、そして移住への想いについて伺いました。

 


 1 “くずまき”への就職

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工場は丘の上にあります。 (提供:小野寺さん)

-くずまきワインに入社されたきっかけはなんですか。

前川:私は紫波町出身で、大学卒業後に県内の一般企業に勤めた後、県の工業技術センターに移り、臨時職員としてワインの試験醸造のお手伝いをさせていただいていました。

そこでの勤務は最長3年間という約束だったので、2年経って次の身の振り方を考えたときに、ちょうどネットで「くずまきワイン」が社員を募集しているのを見て「これだ!」と思って、応募したことがきっかけです。

小野寺:私は宮城県の気仙沼市の生まれです。小さい頃に大船渡市に引っ越して、高校卒業まで大船渡市で過ごしていました。岩手大学に進学してからは2016年3月まで盛岡市に住んでいました。

葛巻町に来たのは、大学の先生から「こういう企業があるよ」と紹介して頂いたのがきっかけです。大学では工学部に所属しておりまして、ずっと発生生物学、生物工学を勉強しておりました。もともと、医療関係に興味があって、どのように脳ができるのか、アルツハイマー病関連遺伝子の解明、再生医療に関する研究をしていたんです。

けれども、「そもそも医療って病気になってから必要になってくる分野だよな、じゃあ健康維持の根本は何か」って考えたときに、それは「食」だろうと。食の分野で自分の経験を活かせないかなと考えました。他にも震災を経験したので、地元に就職して地域に貢献したい、という想いもありました。

 -小野寺さんは大学で研究していたことの延長線上とのことですが、前川さんも何か活かしてらっしゃるものはありますか。

前川:大学では、日本の周りにあるメタンハイドレートを作っている「メタン生成古細菌」っていう微生物の研究をしていました。ワインとは全く関係の無い微生物です。当時、分析実験を多く行っていて、分析のノウハウはありましたので、そのスキルを今の仕事に活かしています。


 2 急に休まれると困ります

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ワインの醸し作業を行う前川さん (提供:小野寺さん)

-会社ではどういう仕事を担当しているんですか。

前川:私は発酵管理、それからワインの分析です。果汁ができた段階の仕込みの最初からワインができるまでを管理しています。

具体的には、発酵がどの程度進んでいるか、アルコール度数と糖度などを分析して見ていきます。あと、出来上がってからのワインの品質管理も私が担当しています。夏場ですと、甘いワインが発酵を始めちゃったりするので、そういうことがないように管理しています。

-何人でその仕事をやってらっしゃいますか。

前川:製造部としては10人以上いますが、発酵管理とワインの分析は私だけですね。

-休まれると困るんですね。

小野寺:困ります!(笑)

前川:実際、仕込みの時期に4日ほど急な事情で休んだんですが、帰ってきたらてんやわんやでした(笑)。

-それは大変でしたね……。小野寺さんはいかがですか。

小野寺:私は、主に生産管理を担当しております。瓶詰工程における最後の検瓶や、製品の最終チェック、資材等の管理・発注などです。あとは、生産計画、工程管理など、それら全般を担当しております。

-同じ質問で恐縮ですが、何人ぐらいで担当されているんですか。

小野寺:生産管理も私だけですね。

前川:私と、小野寺さんの作業は任されている部分が多いので、社内に前任者がいるとは言え簡単には交代できない仕事ですね。

小野寺:お互いの仕事を時間のある時に教えて頂いたり、逆に私がしている仕事を別の人に教えたり、カバーできる体制はとっています。

前川:それでも、急に休まれると困るのはお互い様ですね。

小野寺:そうなんですよ!(笑)。

 


3 「住」みかを「移」す

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この笑顔で足場は良くない (提供:小野寺さん)

-今はどこにお住まいですか。

前川:町中心部にある平屋の貸家です。

小野寺:私は、町の定住促進住宅で中心部からは少し離れています。オール電化、蓄熱式暖房ですごく快適です。

-葛巻町に移住された立場から、県や町の取組みについてご意見はありませんか。

小野寺:岩手県外に向けての移住に関する情報発信はかなりされているんだろうなという印象はあります。しかし、県内で働きたいと考えている若い人に対しては、「薄い」という印象です。

例えば、卒業したばかりの学生が、新しい町で働き始める際、その町で生活するための情報が手に入りにくい。就職先の情報はあると思いますが、衣食住の面でももう少し充実したらいいんじゃないかなと思ったりします。

-決め手となるのは何でしょう? 住宅の情報でしょうか?

小野寺:そうですね。ここに来て驚いたことがあります。例えば大きな市であれば不動産屋さんで部屋探しをすると思うんですが、葛巻町のように「町」の規模になると不動産屋さんがなかなか見つけられず、役場に行かないと情報が得られないことが結構あるんです。

前川:私も、引っ越す時に不動産屋さんを見つけられなかったので「さてどうしよう」となりました。私の時は、町の定住促進住宅は建設途中で入居できませんでしたので、会社からいくつか物件を紹介されたんですけど古い建物が多く、そこで移住をためらう人がいるのかなと思いました。

私の世代では水洗トイレが普通でしたので、もっと若い方々だと初めて昔の和式トイレを見るわけです。和式トイレでお風呂も古い、久しぶりにそういう物件を見て「おっ!?」と思いました。

小野寺:これからもっと若い世代の人たちを呼びたいのであれば、水廻りの環境は整えるべき所かもしれませんね。こういう地域事情などは正直わからないことが多いので、市町村が「こういうサポートをしています」というのをもっとアピールしてもいいんじゃないかなと思います。

-前川さんは定住促進住宅が出来る前に移住したので、そこには入れないんですか?

前川:そうです、入れないです。まあ、私が入れたら際限が無くなってしまいますし、民間の貸家から役場がお客さんを奪う事になってしまいますから当然ですね。

 


4 休日は真逆

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工場併設の売店。試飲もできます。

-休みの日は何をしているんですか?

小野寺:盛岡に買い物に行ったり、沿岸地域に遊びに行ったりしています。どうしても葛巻だとできないことがありますので出掛けることが多いです。

前川:買い物以外は部屋でパソコンの前にいることが多いです。ネットサーフィン、動画・映画視聴、ゲーム、とりあえず座ってできることしかしていないです。

小野寺:真逆ですね。ほんと、真逆。

前川:冬になって、岩洞湖と菜魚湖(一戸)が凍り始めたらワカサギ釣りに行ったりしますけど、それ以外は基本的に家にいます。不便を感じることは無いですね。

-自宅で飲むワインはやっぱりくずまきワインですか?

前川:自宅では他社のワインを飲んでいます。くずまきワインだと、仕事モードにスイッチが入ってしまうので。会社の飲み会でも、他社のワインを飲んで議論することもありますよ。

小野寺:私もプライベートで自社ワインを見かけるとスイッチが入りますね。お店で自社ワインを目にすると、ついビンの向きを整えてしまいます。

 


 5 まだまだこれから

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ワイナリー見学もさせていただきました。

-これからやりたいことなどはありますか。

前川:私はもともと、お酒造りも飲むのも好きで、今は興味があることが出来ています。前職での試験醸造と比べて規模がとても大きいですし、いろいろ自分なりに考えながらやっていて面白いと感じているところなので、今の仕事にもっと打ち込んでいきたいですね。

小野寺:私はヤマブドウの機能性について研究し、ワインやジュースに活かしたいと思っています。

もし可能であれば働きながら論文も書きたいと思っています。今は仕事を覚えるので手一杯の状態ですので、徐々にそういった研究分野で自分の経験を活かしたいな、と思っています。

 

 

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製造部の大久保部長(中央)を囲んで1枚


 

 休日の過ごし方が正反対の若手ホープのお二人でしたが、仕事モードのスイッチは同じところにありました。
 これからも、新しいワインを造り続けて、みんなを楽しませてください!!

 

くずまきワイン(葛巻高原食品加工(株))  http://www.kuzumakiwine.com/