2017.2.8(水)

タイトル「いわてびと」

〜 番外編その12 まちづくりは、自らが楽しむところから-花巻市地域おこし協力隊/株式会社ぼうけん 代表取締役 福田一馬さん 〜

    

いわてで活躍するいわての若者や団体を紹介する「いわてびと」めっけ!

※「めっける!めっけだ!」は、岩手県など東北地方の方言で「見つけた!」「発見!」という意味。

番外編では、いつものコネックさんではなく、岩手県庁の若手職員が若者を取材しています!
今回は、花巻に無邪気な笑顔を増やしたいと思い立ち、(株)ぼうけんを立ち上げた福田一馬さんをめっけ!

2015年から花巻市花巻地区で地域おこし協力隊として活動されている盛岡市出身の福田一馬(ふくだ かずま)さん。
現在は地域おこし協力隊としての活動の他、ミズベリング花巻の代表や、自ら立ち上げた(株)ぼうけんの代表取締役として日々精力的に活動しています。今回は福田さんに活動のきっかけや、ご自身が考えるまちづくりについて伺いました。

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1.全て自分が責任を負う環境でやりたかった
―ご夫婦ともに海上自衛隊出身。転職を決意し、家族で岩手に移住しようと思ったきっかけについて教えてください。

福田:自衛隊を辞めて、岩手に行こう、岩手で就職しようと思ったきっかけは二つあります。
ひとつは息子ができたこと。自衛隊だと転勤が2年に1回位あるのですが、私も妻も「子どもは夫婦で一緒に育てたい」と思っていたので、単身赴任をしたり家族が転勤に付いて回ることをしたくないなと思いました。ふたりとも岩手県出身だし、野菜は美味しいし風土も良いし。妻が「岩手で子育てしたいね」と言っていたのを覚えていたんです。

もうひとつが、仕事の成功も失敗も全部自分のせいっていう環境でやりたかったということ。出身大学やその時の職級で給料が決まるのではなく、自分の頑張り次第で報酬が多かったり少なかったり、それがいいじゃないかって思ったんです。

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広大な自宅敷地にて

―福田さんの任務として、花巻地区にて、(株)花巻家守舎のサポートや公共空間の利活用、リノベーションまちづくりなどが掲げられていますが、自衛隊にいた頃からそのようなことに興味があったのですか。

福田:それが全然ありませんでした(笑)。転職を考えていたときに地域おこし協力隊という制度があることを知って調べたところ、花巻市が募集していて、私と妻の実家の中間あたりでちょうどいいねってなったんです。
花巻地区の募集要項の中で「リノベーションまちづくり」という言葉を初めて見たのですが、それから「リノベーション」や「花巻家守舎」のことを調べていくうちに、私のやりたいこと、面白いことができそうだと感じ、応募を決意しました。まちづくりのことを考え始めたのもそれからです。

2.地域おこし協力隊同士がつながり、事業提案へ
―一人ひとりにミッションが与えられ、それぞれの地域課題解決に向けて取り組む地域おこし協力隊員―そんなイメージがありますが、福田さんは協力隊員同士がつながる場を作っているそうです。

福田:どこまで実現できるか分からないのですが、地域おこし協力隊は基本的にはそれぞれの市町村ごとに活動していますがもっと広域でつながりたいという思いがあって、新しく北上市に着任した協力隊員に、私の知っている県南地域の協力隊の人たちを紹介する場を作ったのが最初のきっかけです。自己紹介やそれぞれが持っているスキルを話したのですが、聞いてみたら色々なスキルを持った人がいて。もったいないので「ワークショップで事業計画を作って、何か事業を県南地域の協力隊としてやってみませんか」という話をしました。そこで、ワークショップを全部で5回やって、先日、事業計画をまとめたんです。
具体的には、各地域の“おもしろ魅力コンテンツ”をいっぱい同じテーブルの上に出し合って、それを移住者や若者の目で編集してみる。アイディアが出たら、そこから事業計画を練り上げます。コンセプトやターゲット、資金計画についての議論をしてまとめていきました。

例を挙げると、「空き家お掃除隊」、「おばあちゃんの宅急便パック」などです。
あと「廃県置藩」といって「廃藩置県」の逆なのですが(笑)。ちょうど県南地域って伊達藩と南部藩の境がありますよね。藩境があったところで何かゲーム性のイベントで戦わせてみよう、という事業です。一日がかりのイベントだと、疲れて帰りたくなくなる(笑)ので、そこで宿泊してもらうことで地域にお金が落ちる仕組みを考えています。
全部の事業について、収支が合うように考えてもらっています。

―そこで、事業を一緒にやってくれる人にプレゼンして実現させたい、ということですね。

福田:事業計画を作って終わりではなく、何か発表する場を設定して、あえて「発表しなきゃいけない」って切迫感をもたせてやりたいと思っています。県内の事業者さん、青年会議所や商工会青年部などの方々に聞いてもらって「その事業面白そう。うちの会社で何か提供できるよ」とか「資金出すよ」とか、本当はそういうところまでもっていきたいんです。協力隊がやるとなると、行政も何かしら支援のしやすさもあるでしょうし、移住者がやる事業なので色んなメリットがあると思います。

私は協力隊の成果を「もの」で計るのは難しいと思っているんです。起業したから素晴らしいと言う人もいるし、地域のおばあちゃんを1,000人知っている方がすごいと言う人もいる。人によってものさしの尺度が違うんですよね。私にとっての一番の成果は協力隊がその地域に残ることだと思っています。3年間地域を掘り下げて、色んなところにつながってコミュニケーションを取れている協力隊員、生産年齢で子どもを生むかもしれないっていう若者が地域から離れてしまうことが、地域にとっても本人にとってもマイナスなことだと思っているので、「何かできることがあるはずだから、まずは残ろうよ」って思っています。

3.ミズベリング花巻、(株)ぼうけん代表としての活動
水辺の新しい活用の可能性を創造していくプロジェクト、ミズベリング花巻。
(株)ぼうけんは花巻に無邪気な笑顔(幸せの瞬間)を増やしたいと設立した会社。
福田さんは2つの代表でもあります。

福田:ミズベリングの本拠地は東京にあります。ミズベリングとは、水辺の未来を創る人が集い、共に動き出すためのプロジェクトで、市民、企業、行政がひとつになって水辺を有効活用しよう、というのを全国的に波及させようとしている組織です。石巻にもあるし、北海道など各地にあります。岩手はいまのところ花巻だけですね。

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(写真提供:福田一馬さん 撮影場所:イギリス海岸)

川を例に挙げると、昔は川遊びは日常的にやっていたし、おばあちゃんが大根を洗ったり、川の水は農家でも使うし、もっと身近なものだったと聞きます。ところが今は治水のため、護岸や堤防ができたり、「危ないから近寄ってはいけません!」と教えられて、川と触れ合う機会が少なくなっています。それはそれで仕方がないことだと思いますが、今は今なりの使い方があるはずなので、その使い方を提案していきたいと思っています。
もちろん、川遊びは知識がない状態でやると危険なので、ちゃんと予備知識をもって、どうやったら安全か知っておく必要があります。「危険だからやらない」だと一生やらない。それではもったいないと思います。ちゃんと知識を身につければ安全に楽しむことができます。

―今「ぼうけん」の方で考えていることはありますか。

福田:花巻のアクティビティ(野外での遊び)をつなぐ拠点を作りたいと思っています。花巻スポーツランドという、ラフティングやカヌー、冬はスノーモービルができる場所があるのですが、そのすぐそばにある古民家を購入したんです。私たちもそこに住むのですが、一部を古民家宿泊体験が出来る場にして花巻スポーツランドに来るお客さんにうちに泊まってほしいなと思っています。川遊びをして疲れたら、そのまま一連の流れでうちに来てもらって、アクティビティがずっと終わらない、というような。そんなことをやろうと思って、いま古民家をセルフリノベーション中です。

子ども連れの家族をターゲットとして想定しているのですが、子どもたちを広い敷地に開放して、親たちは日頃のストレスを開放する空間をイメージしています。そして、子どもとお母さんは野菜を収穫して、お父さんは薪を割って火を起こして、みんなで料理するなど、いろいろな体験ができる場所にしたいです。野菜部門は妻に任せています。敷地の一角で野菜を栽培して提供したいと思っています。

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先日開催された古民家リノベーション実践講習会の様子(写真提供:福田一馬さん)

4.みんなが自由に、花巻での居場所を見つけてほしい
―移住者として、地域との関係はどのようにつくられたのですか。

福田:できるだけオープンにすることを心がけました。住まいと仕事の拠点になる古民家の周りの方にご挨拶に伺ったとき、A4の紙にこれまでの経歴や花巻に来た経緯、目的を写真付きで載せてお届けしました。変な噂が立つ前に自ら近づいて情報を出して(笑)。
古民家リノベーション実践講習会というワークショップを開催した時に、最終日に地域の方もお呼びして慰労会&プチお披露目会をやったのですが、近所のおばあちゃんが漬物を持って来てくれたりして嬉しかったですね。

―お話を伺うと、子育てに良い環境ややりたいことなど、自分の興味に従って行動していった結果、周りにも影響を与えるようになった、ということでしょうか。

福田:私は「ぼうけん」もまちづくりの一環、まちづくりのできる会社にしようと思っているのですが、地域のことを考えちゃうと、何をしたら良いかわからなくなるんですよ。でも、自分が住んでいる花巻が、自分が住みやすい花巻であったら、それで幸せじゃないですか。そうすると、私と同じような活動をしている人とか、価値観が同じ人が自然と集まってくるでしょうし。

街も、住んでいる人が凄く多彩じゃないですか。年代も広いし、色んな職業に就いている人もいるし。だからその人たちを全員満足させるっていうのはきっと無理だけど、それぞれが、「私は花巻が好き」と言える部分があって、みんなが自由に、やりたいように花巻での居場所を見つけてくれれば、それで良いのかなと思います。

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仲間の手を借りながら自らリノベーションを手掛ける自宅前で。今年の春頃に完成予定とのこと

自分が楽しく暮らすため、自分が欲しいものを作る。結果としてそれが、周りに良い影響を与えていく―
そんな、一人ひとりの行動の積み重ねが、まちを良くしていくのだと感じました。

株式会社ぼうけん https://www.facebook.com/bouken.hanamaki/
ミズベリング花巻 https://www.facebook.com/mizbering.hanamaki/
ミズベリング http://mizbering.jp/