2016.11.9(水)

タイトル「いわてびと」

〜 番外編その3 「あなたの顔が見たい」 – 由井野菜園 由井和正さん 〜

    

いわてで活躍するいわての若者や団体を紹介する「いわてびと」めっけ!
※「めっける!めっけだ!」は、岩手県など東北地方の方言で「見つけた!」「発見!」という意味。
番外編では、いつものコネックさんではなく、岩手県庁の若手職員が若者を取材します!

その3では、由井野菜園の由井和正さんをめっけ!

由井さん01

由井和正(ゆい かずまさ)さんは大学で工学を学んだあと、大手鉄道会社勤務を経て農業の世界に飛び込みました。農業に縁もゆかりもなかった工業男子が、なぜ農業の世界に飛び込み、何を目指しているのか。由井さんが目指す農業とそのルーツを取材しました。

1.工業男子が農家を目指したワケ

農業に縁のなかった由井さんが、農業を目指すことになったきっかけは何ですか。

以前の仕事では直接お客さんと接することがほとんどなくて、それなのにわけもわからないくらいに忙しくて、仕事をしている実感というか、なかなかやりがいが見つけられずにいました。
そんなとき、東日本大震災が起こって。スーパーから食糧がなくなりましたよね。その後、久しぶりにスーパーに物が揃うようになって、ちゃんとご飯が食べられるようになったとき、すごいご飯がおいしく感じて。食べることや、食べ物がすごい大事だと思ったんです。
そのときに、食べ物とか、飲食とか、農業に興味を持った、という感じですね。

自分の生活の中で、一番心が動いた分野に飛び込んだということですね。

そうですね。経験があった訳でも、実家が農業をやっていた訳でも、周りに農家がいた訳でもないんです。農業を始めようと思って、はじめに農地を借りようとしたのですが、「未経験者には貸せない」と断られてしまったんです。今思えばそのとおりなんですけど。
だから、はじめに農家で働かせてもらいながら勉強することにしたんです。その中で、多品目を少しずつ作って、直接お客さんとやりとりできるような農業を模索するようになりました。

2.お互いに顔が見える農家を目指して

由井さん02黒板に書かれたお知らせ。収穫体験もできます。

農業というと、地域ごとにそれぞれ特産品があって、「産地」というイメージもあります。

「岩手町ならキャベツ」「西根ならほうれん草」というような単作で行うスタイルは、たしかに主流です。でも、そうすると、食べてくれるお客様に売っているのではなくて、顔の見えない誰かに売る形になってしまうと思うんです。だから「直接お客さんとやりとりがしたい」という心で、ここに直売所をつくりました。こういう風にお客さんに売っていると、「おいしかったよ」と直接言っていただけるんです。
それが本当にうれしくて、それがもう本当にやりがいなんです。

直売所に並べられている野菜を見ると、なじみのない品種が多いですね。

ずっと同じ品種を並べていると、お客さんは飽きちゃったりするんです。だから、例えばナスをとっても、今はこのナスだけど、一か月後にはまた別のナスが出てきますよ、っていう風にした方が面白いのかな、と思っています。同じナスでも次から次へと違う品種を提供できるようにしたいと思っています。

こだわりのレストランみたいですね。季節や年でメニューを変えたり。

実は、はじめから多品種でやろうとは思っていたんですけど、最初は次から次へと入れ替わりでリレーのようにやるという考えではなくて、「明らかに食べておいしいもの」、例えば、トウモロコシとか枝豆とかを軸にして、それを目当てに買いにきてくれるお客さんに他のナスやトマトも買ってもらえたらいいな、という風に考えていたんです。
でも、やってみると意外とそうではなくて、やっぱりいろいろな野菜があった方がお客さんも楽しそうというか、「いろいろ買ってみたいなあ」と言ってくださるのが嬉しくて。飽きずに来てもらえるのかなと。

3. 石焼きハイブリッド農家!?

由井さん03直売所の中で取材しました

農家さんといえば、冬の過ごし方も気になります。

サツマイモを作っているんですけど、サツマイモで「石焼き芋」を販売して歩こう、軽トラに石焼き芋の機械を載せて歩こうと思っています。狭いところ、近いところから順に行って、売りながら「ここの畑で冬以外は野菜を販売していますよ」っていう宣伝をして。最終的にはやっぱり農園にお客さんに来てもらって、直接面と向かって販売がしたいです。
農家って、どうしても夏が忙しいので、うまく冬に稼いで忙しさを均して年中稼げるようにした方が、人並みな生活ができるのかな、と思っています。そこは目標です。

今までの農家さんのイメージとは少し違いますね。

そうなればいいな、と。農家さんが冬に農作業を休むと言っても、他所へアルバイトに行ったりすることもあるんです。でも、畑はいっぱいあるので、自分は採れるものをうまく使って、工夫して自分で稼ぎたいと思っています。

4.人と人をつなぐ野菜園

由井さん04取材終わりに野菜を購入。とっても美味しかったです。

野菜園の雰囲気、すごくいいですよね。実際にお邪魔させてもらって、びっくりしました。

ありがとうございます。ここの納屋のリフォームは地元の業者さんにお願いしたんです。すごい素敵な家を建てられていて敷居が高そうだったんですが、快く引き受けて下さって。そこから色々な人とドンドンつながっていきました。
はじめたときは、「全部自分でやってやる」っていう気持ちもあったんですけど、いざ始めてみると無理なんですよね。全部やれないし、やる必要もない。その道のプロがいるじゃないですか。そういういろいろな人と関わって、お願いするようにしています。必ずその方が自分より素敵な仕事をやってくれる。そのかわり、自分は農家にしかできない仕事を考えて、新しいものを生み出していきたいと考えています。

私たち消費者も野菜作りを農家さんにお任せしていますが、住む場所によっては、実際に農家の方と話す機会は、ほとんどありません。

今は産直も増えてきて、生産者の顔写真が貼ってある所も増えていますが、その先に行きたいんです。
農家がどういう思いで野菜を作っているのか、面と向かってお話しして。そうして買ってくれた野菜って、お客さんも味わって食べてくれると思うんですよね。味わって食べてもらえないなんて、もったいないというか、野菜を作るのはすごい大変なのに、と思うんです。
野菜って、すごく美味しいんです。新鮮で、大事に育てた野菜ならなおさら。だから、ここでしっかりと野菜を売りたいなって思いますし、お客さんには味わって食べてもらえたら幸せです。

 



「お客様においしい野菜を食べてもらいたい」
由井さんはその一心で野菜作りを続けています。
皆さんのことを考えて作った「手作り野菜」、是非味わってみてください。

由井野菜園の情報はこちらから
由井野菜園(Twitter) https://twitter.com/w_drip_drum