2016.10.28(金)

タイトル「いわてびと」

〜 番外編 賢治さんに憧れて – 岩手大学2年生・ぶどう部 部長 白井賢太朗さん 〜

    

いわてで活躍するいわての若者や団体を紹介する「いわてびと」めっけ!

※「めっける!めっけだ!」は、岩手県など東北地方の方言で「見つけた!」「発見!」という意味。

今回もコネックさんではなく、岩手県庁の若手職員が若者を取材しました!
岩手大学ぶどう部でぶどう農家のお手伝いをしている白井賢太朗さんをめっけ!

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宮沢賢治に憧れて農業の道を志し、岩手にやってきた白井賢太朗さん。現在、岩手大学農学部の2年生である白井さんは、1年前に地域のぶどう農家を支援する「ぶどう部」を立ち上げ、岩手のぶどう作りに積極的に関わると同時に、現代の農業と自らの夢に真剣に向き合っています。 

 

 

1.宮沢賢治との出会い-そして岩手へ
生まれも育ちも東京都。そんな白井さんがなぜ岩手でぶどう農家のお手伝いをするのか。すべては宮沢賢治との出会いがきっかけでした。

白井:生まれは東京都大田区で、両親の実家も東京なので、岩手には特別な縁があるわけではありませんでした。宮沢賢治との出会いがきっかけで、岩手大学の農学部に進学しようと決意しました。

私と賢治さんの出会いは、両親から賢太朗の「賢」は宮沢賢治の「賢」からとったと教えられたことがきっかけでした。その後、小学校の読書感想文や調べ学習等で賢治さんを調べていくうちに、常に人のことを考え、また、岩手県の農業の発展に尽力した賢治さんを好きになり、同時に農業に興味を持ちました。そして、自分が高校生の頃、農業の分野で色々な問題が起こっていることを知り、自分にできることは何なのかと考え、賢治さんの学んだ岩大の農学部に進学するのが良いのではないかと思って岩手に来ました。

岩手に来て、一年生の頃は自分で活動することは頭になく、どういう形で農業に関わればよいのか探していたところ、去年の11月に花巻市の地域おこし協力隊で大迫地区を担当している人と、大学の先輩が企画した勉強会に参加して、「団体つくらない?」と言われたのが始まりです。「継続的にやってほしい」と言われてぶどう部が設立され、私が立候補して部長になりました。また、農学部の授業自体に実習が少なく、自分の経験にもなるし花巻市のためにもなるということも私の背中を押しました。

 

2.岩手のぶどう農家を支援する「ぶどう部」
岩手に来てぶどう部を設立した白井さん。なぜ「ぶどう」なのか。ぶどう部の目指すところは。実際にどのように活動をしているのか。白井さんに語っていただきました。

白井:岩手には米をはじめとして様々な農作物があります。その中で具体的に何がやりたいというものは当初ありませんでした。そんな時に、ぶどう部との出会いがあり、「あ、ぶどう作りで困っている人がいるんだ!じゃ、ぶどうやるか」みたいな気持ちがスタートでした。もし大迫が米で困っていたら米をやっていたかもしれません。でも実際にぶどう部として活動するようになって、ぶどうは私のような未経験者でも手伝い易い作業があるので、その面ではぶどうは関わりやすい作物なのかなと感じています。

ぶどう部の目的としては「学生とぶどう作りの現場をつなげ、地域の魅力を発信し、地域を盛り上げる」というのを掲げています。ただ、この目的は抽象的でもあるので、試行錯誤しながら色々なことに挑戦しています。

ぶどう部ではこれまで週一回ミーティングをしながら、月一回のペースで現地に行くようにしてきました。現地では作業を手伝ったり、楽しむことも含めて魅力を発信するために情報収集をしています。まだ現地に行って体験する段階ですが、東京にいる時はこのような作業はしたことがなかったので、様々な縁でつながりができた人の畑に入って作業させてもらえることに喜びを感じています。それだけで「助けになっている」、「嬉しいよ」と声をかけてもらったりして「あっ、じゃあまた来ます。」みたいな感じで。将来的にぶどう農家になると決めているわけではないですが、農業に関わっていたいので、その面でも良い経験をさせていだたいていると思います。

今後は学祭等でもぶどうの商品と情報誌を出していこうと思っていて、今その準備をしています。また、岩大でもぶどうをつくろうということで、大学の先生に相談して、ぶどうを栽培する棚を作るところから取り組んでいます。他には自分達の中でぶどうやワインについて勉強しようと、「ぶどうゼミ」の立ち上げを考えています。

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(写真提供:白井賢太朗さん)

 

3.土に触れて-白井さんが感じる岩手のぶどうの可能性
-岩手に来て農家さんを手伝い、「こんなすごい自然があるんだなぁと感じ入ったという白井さん。農作業をして感じたこと。岩手のぶどうの可能性とは。

白井:初めて大学の圃場で農作物を栽培した時に、大きく育つもの、うまく育たないものなどの植物の成長をリアルに実感できました。

今、岩手県内では新しいワイナリーが増えていて、ワイン王国にしようという動きがあると聞いています。そんな中で、ぶどうの蔓を工芸品に使えないかという新しい発想もでています。また、大迫ではぶどうの品質を良くするために、様々な工夫を凝らし「良いもの」を作ろうと皆で努力しています。国際コンクールで金賞を受賞している企業もあります。これからは地域が活躍する時代になり、地域の独自性を活かした産業にスポットがあたってくると、大迫のワインの魅力がより多くの人に伝わるようになると思います。そういうところに岩手のぶどうの可能性を感じています。

 

  1. 未来の自分-農家への憧れと白井さんの今後
-農業についていきいきと話す白井さん。このまま農家になるのかと思いきや、白井さんはもっと大きなビジョンを持って農業と向き合っているようです。

白井:自然を相手に生きているという点で、農家の生活に対する憧れはあります。ある本で読んだのですが、その中の言葉を借りると、都会では自由すぎてそれに縛られている。自由の奴隷というか、縛られていて生きる実感を得られない、リアリティがないと。田舎では、生産者である農家との距離が物理的にも精神的にも近く、消費者がその生活を身近に感じている。生産する過程やその苦労を知っているというのは、命の流れを知っているということだと思います。そういう面で豊かな暮らしができているのかなと感じています。

農家になることだけが岩手県の農業を振興させるとは限らないので、自分が将来的に農家になるかというとまだ決められないですが、一つのことに固執せずに様々な経験を積むことで広い視野を持ち、農家の気持ちと農協、農業法人、卸売市場、小売店舗などの農業に関わる人の気持ちも分かるし、本当の第三者の立場で農業振興できたらいいなとは思っています。そして、しっかりと農家の人や地域の人、県民や大きくみれば全国の人に役立つ人になりたいと思っています。

今、考えている今後の予定としては、ぶどう部をとにかく頑張って、その後学生のうちに留学したいと考えています。そして、卒業後は農業法人に就職し、そこで農業だけではなく様々なノウハウを学び、将来的には独立できればと考えています。

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もっと岩手に染まりたいという白井さん。控えめでおとなしそうな印象から農業への熱い想いを話してくれる白井さんの姿は、私たち以上に「岩手人」という言葉がピッタリの若者でした