2016.10.19(水)

タイトル「いわてびと」

〜 番外編 人と人をつなぐ不動産屋-奥州市・五郎不動産 店長 佐々木勝郎さん 〜

    

いわてで活躍するいわての若者や団体を紹介する「いわてびと」めっけ!

※「めっける!めっけだ!」は、岩手県など東北地方の方言で「見つけた!」「発見!」という意味。

今回は、いつものコネックさんではなく、岩手県庁の若手職員が若者を取材しました!
奥州市で活躍する、佐々木勝郎さんをめっけ!

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佐々木勝郎さんは県内の高校を卒業後、自衛隊、工務店勤務を経て2012年に地元・奥州市で「五郎不動産」を父親とともに開業。宅地建物取引士として会社を切り盛りしながら、地域の若者が集まるイベントをしかけたり、仲間を募って賃貸物件でDIYワークショップを行うなど、自身が感じる “面白そうなこと”に積極的に関わっています。不動産業と自身の活動に対する佐々木さんの想いをご紹介します。

 

1.関わった方々が笑顔になる不動産屋を目指して
-元々家業として不動産業を営んでいるわけではなかった佐々木さんが、新規に不動産会社を立ち上げたのは2012年のことでした。単純に物件を仲介するだけの不動産屋ではなく、個々の物件に深く関わり、顧客のニーズに応えるために自分は何ができるか、何がしたいかを佐々木さんは常に考えます。
佐々木:小さいころから不動産屋になりたかったわけではありませんが、祖父が不動産を所有していたのと、父親が興味を持っていたことが影響していると思います。2011年に東日本大震災が起きて、いつどうなるか分からない現状を目の当たりにしたことで、だったら自分の好きなこと、興味のあることをしようと思い立ちました。

祖父が所有していたアパートがあったのですが、とにかく古くて。お風呂もないしトイレも共同だし、現在のライフスタイルにはなかなか合わない。老朽化が激しいこともあって、リノベーションは断念して貸家を新築することにしました。家賃収入や利回りのことを考えると、2階建てにして床面積を増やした方がいいのですが、お客さんからは「犬と暮らせる平屋がいい」という声があって。敷地が比較的街に近い位置なので、街中でペットと暮らす平屋の貸家もアリなんじゃないかって思い、平屋の貸家を3棟建てる予定です。家賃収入は減るかもしれないけど、それで周りの賃貸物件と差別化ができれば、必ず「住みたい」と思ってくれる人はいると思っています。

それから、「五郎不動産」では雑貨も取り扱っています。照明のスイッチや飾り棚のような小物など、僕自身が気に入ったもの、好きなものを集めて置いています。買いに来る人はあまりいないんですが、もし売れなくても、元々自分が好きなデザインなので、事務所や自宅に使えますから(笑)。あとは、成約特典でプレゼントしたりもしています。家を建てたり、DIYで改修したりするときに、小物をどれにするかで結構悩むこともあると思うのですが、「五郎不動産」に置いてあるものを実際に手に取ってみて、使ってもらえたらいいな、と思います。

 

2.小さな街を作るイベント-「GORO’s TOWN」
-会社を始めて間もない2013年に「GORO’s TOWN」というイベントを企画した佐々木さん。佐々木さんの呼びかけに集まった仲間たちは同世代のバラエティ豊かな面々。そこには、「小さな街を作る」という想いがありました。
佐々木:不動産屋をオープンしてすぐの頃は、なかなかお客さんが来なくて。チラシを作って配るよりも、実際に事務所に来てほしいという気持ちがあったので、お祭りのようなイベントをやったらどうかな、ということになったんです。友達や知り合いに声をかけて、カフェや雑貨、ドックサロンが「五郎不動産」の事務所の中でお店を開いて、食べたり飲んだりして楽しもう、というイベントでした。

GORO's TOWN03(写真提供:佐々木勝郎さん)

2014年に「GORO’s TOWN 2nd」を続けて開催しました。イベントに参加してくれた仲間も、お店を開いて2年目、3年目という人が多かったので、イベントそのものがみんなにとっていいPRになったと思います。このときは、同級生がアコースティックライブをやったり、遠くからも友達が来てくれたり、ほかのお店のお客さんと情報交換したり・・・すごく楽しかったです。

GORO's TOWN04(写真提供:佐々木勝郎さん)

いろいろな業種のお店を集めて、「五郎不動産」の中に小さな街を作る、そんなコンセプトもあって「GORO’s TOWN」という名前を付けたのですが、徐々にそれぞれのお店が忙しくなってきたりしたこともあって、去年は開催しませんでした。仲間たちとは、また何年か後に集まれればいいね、という話をしています。企画する僕たちが楽しむことが一番だと思っているので、無理のない範囲で(笑)。

 

3.センスの良いDIYで物件の価値を上げる
-“原状回復”が主流の日本の賃貸業界ですが、「五郎不動産」では自社が仲介する物件でDIYワークショップを行っています。住んでいる人が自分でセンス良く直していけば、その物件の価値は上がる、と佐々木さんは言います。
佐々木:今年の1月25日に岩手県が主催した「リノベーションシンポジウム」で話を聞いて、うちでも何かしたい!と思いました。そこで、大家さんの承諾を受け、4月から5月にかけて3回のDIYワークショップを開催したんです。漆喰を壁に塗ったり、クロスを貼ったり、バーカウンターを作ったり。今はおしゃれな若者が住んでいるんですが、好きなように手を加えてもいい、ということにしています。自分で手を加えると愛着が出てなかなか引っ越せなくなるし、センスが良ければその物件の価値は上がりますよね。ただ、センスが悪いと逆に価値が下がってしまうので、不動産屋としてそこの見極めは必要だなと感じています。

DIY03(写真提供:佐々木勝郎さん)

もちろん、大家さんもいろいろで、「古いから好きにしていいよ、そういう時代だもんね」という人もいれば、「元に戻せ」という人もいる。お金をかけてきれいにすれば、借り手が見つかると考えていた大家さんには、「回収できないからやめた方がいい」とアドバイスしたこともあります。不動産屋としては儲けにならないんですが(笑)。幸い、「五郎不動産」に物件を提供してくれる大家さんは、理解のある方が多いですね。

DIY04(写真提供:佐々木勝郎さん)

4.人と人をつなぐ不動産屋
-面白そうなことに顔を出して、人とつながるのが好きな佐々木さん。「五郎不動産」のブログからは、自分たちが住んでいるところや生まれ育ったところの魅力を伝えたいという気持ちが感じられます。
佐々木:いろいろやっているイメージがあるのか、僕ひとりではできないことを頼まれることもあるんですが、そんなときは知り合いに声をかけてチームを作ったりします。そんな風に人と人の間を仲介して企画していると、不動産の仕事も同じだな、と思うことはありますね。人から頼られるのは嬉しいので、人の記憶に残るように意識はしてますね。ちょんまげにしたり、半そで短パンで仕事したり(笑)。

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いろいろなところに顔を出しているので、奥州市で活躍したり頑張っている同世代の人たちとは大体顔見知りです。実は、「五郎不動産」のブログには、物件情報が1割くらいしか載っていません(笑)。あとは、地域で気になるお店や行ってみたいところや人の紹介がほとんど。お店や売っている商品だけじゃなくて、そこで頑張っている素敵な人も紹介することで、そこからまたつながりが生まれています。

ワンルームのアパートから結婚したので少し広いところに引っ越ししたり、子供が生まれたから土地を探したり家を建てたり、古い家をリノベーションしたり・・・。不動産屋って、依頼されたそのときだけではなく、良い関係が作ることができれば、お客さんの人生そのものに深く関わることができる職業だと思います。不動産業を生業として選んだからには、その道で自分が思うところを行ってみたいですね。
「僕は何もできない」と謙遜する佐々木さんですが、イベントにしてもワークショップにしても、仕事や日々の生活を楽しんでいる姿に魅力を感じるからこそ、人が集まるのだと思います。目の前に広がる面白そうなことやワクワクする世界のことを話す佐々木さんの目は、少年のように輝いていました。

五郎不動産 http://goro-estate.com/