いわて若者会議2018 いわて若者会議 若者が地域の課題解決を目指して自…
2016.1.28(木)
「いわてびと」めっけ!のコーナーでは、いわてで活躍するいわての若者や団体を紹介していきます! 「めっけ!」は、岩手県など東北地方の方言で「見つけた!」「発見!」という意味です。
第12回は、2015年11月28日に行われた「いわて若者スタディミーティング」に参加していただいた皆さんの中から、大船渡市で活動しているNPO法人「With You Global -あなたと共に-」の理事長、瀬知行さんにお話を伺いました。震災を機に大船渡市へ移住を決め、子どもたちと新しい未来を考える、瀬さんをめっけ!
瀬知行(せ ともゆき)というどこにでもある苗字で(笑)
出身は山口県というどこにでもある場所です(笑)。
もともとは保育士をしていて、実家も保育園だったんです。
保育士になりたかったのも、「大変な状況、困難な状況にいる子どもたちのために働きたい」と思ったからで、震災が起きた時に、そういう子どもたちが東北に居るんじゃないかということで、移住をすることを決め、
2011年の10月、22歳の時に岩手に引っ越してきました。
そうです。実家の保育園でですね。
沖縄県で短大を卒業して、山口県で1年働いてからこちらに来たんです。
父親は牧師をしている家族で、5人兄弟の真ん中として育ちました。
実家が保育園を営んでいたというのもあって、まわりに子どもたちが当たり前にいるような環境でしたね。
特別子どもが好きとか嫌いとかというよりは、勿論好きだとは思うんですけど、あまりにも昔から当たり前のようにまわりに子どもたちがたくさんいたので、子どもたちと一緒にいるほうが自然体な感じの育ち方でした。
僕、見た目は真面目な感じしていますが(笑)クラスではずっとムードメーカーな感じでやっていました。
中学校の時にちょっといじめられっ子を助けまして、それがきっかけで自分がいじめられてしまったんです。今は助けてよかったと思ってますけど。
そういう経験がなかったら被災地に来るというか、大変な状況にいる子どもたちのために働くという夢もなくなったと思うので、今となってはいじめてくれてありがとうと考えています。いじめられてしまった経験も糧になっているというか。プラスになっていますね。
高校の時に虐待問題とかいじめ自殺、最近は無いですが親殺し子殺しみたいなニュースが頻発していた時期がありまして。
自分のまわりにいた保育園に来ている子どもたちやその家庭では、いわゆる幸せそうな子どもたちが多かったんですけど、日本の中には聞いたこともないような想像もできないような環境にいる子どもたちが居ることを知ったんですね。
本当に助けを必要している子どもたちは、待ってても来ないというか、こっちが助けに行かないと、救い出せないから大変というか、そういう状況があって。
保育園や学校に来られる子たちはまだ良いほうなんですね、そこまで辿りつけない子達のために働きたいなと思いました。
沖縄県に行ったのは、自分が山口県しか知らなかったから、(山口)県を一度出てみたいと。地元で勉強して地元で就職したら、これ一生この場所から出られないのは嫌だなと思って。
あと、南の島に住んでみたかったというのもあり(笑)。
沖縄はやっぱり人が魅力的だなと思いながら住んでみると、すごい優しい人たちがたくさんいて、大好きになりました。
そうです。実家で一年働いた頃に、震災が起きて。その日は卒園式の前にある最後の遠足、お別れ遠足の日でした。
揺れていなかったのか(僕自身は、揺れが)全くわからなくて。(※山口県では震度1の地域がありました。)
お別れ遠足が終わって、お昼寝させて、携帯を見たらもうすごいことになっていて、びっくりしたんです。
仕事中でそういう情報をあまり見られなかったんですが、保護者の方がすごい大変ですよって教えてくださって。
その日くらいに東北に行こうって決めましたね。
いえ、全然いないんですよ。
今は大船渡市にいますけれど、(まったく知り合いがいない)そういう意味では沖縄県より遠いんですよね。
しかも僕、寒いのがだいぶ苦手で。だから進学先には沖縄県を選んだってところもあるんです(笑)。
やっぱり映像を見て、これは助けが必要なんじゃないかと・・・。
僕も学生時代にいじめとかいろいろ問題あったりして、自分もなにか人の役に立ちたい、特に子どもたちの為に働きたいと常に思っていたので。
そういう時に震災があって、そこでの反応のスピードは僕にとっては普通なんですよ。それだけ準備をしてたというか。
その時はとりあえず現地に行きたい、自分にできることをしたいという思いで、 すぐに保育士の資格を利用したボランティアの口を探していたんですけど、 いかんせん山口県は被災地から遠くて、なかなか行くチャンスを掴めず気持ちだけが焦っていましたね。
2011年の2月に、クリスチャン(※キリスト教信者)のネットワーク会議みたいなのがありまして、全国のクリスチャンと出会ってネットワークを作っていたんですね。
そこで知り合った九州の佐賀県の宣教師に電話をしたら「今東北だよ、 自家用車で、20時間以上もかけて来てるよ」と言われました。
その人からまた5月に行くから一緒に行こうと誘われて、是非お願いしますと即答しました。
その時は南三陸町と郡山市に行きましたね。
大船渡市行きが決まったのは直前でした。
震災当時「一人で行っても何も出来ない」というのがすでに現地でボランティア活動している仲間からの情報として入っていたので、チームで活動したいと考えていました。そこで僕の所属している任意団体、当時は「CCMN」という名前だったんですけれども、その団体の一員として岩手で活動するということになりました。 その時に「大船渡・釜石で活動して下さい」となりまして、「はい」と。
最初は物資の支援、食べ物だったり生活必需品だったり、現地に入ったのが10月だったので、冬物衣類の支援などですね。
聞き取り調査を行って必要な物を買って配るために、しまむらに行って女性ものの肌着とかを大量に買い漁ったり……(笑)
今では笑えますけど、当時はそんなことも言ってられない状況でしたし、もう二度と無いであろう経験ですね。
それが今のWith You Globalですね。特定非営利活動(NPO)法人として活動することになり、名前が変わりました。
僕達も「これがしたい」というのは無くて、「まち」のニーズに合った活動をしたかったんです。
イベントをして欲しいという要望があればクリスマス会や編み物会、御茶会や足湯なんかもやりましたし、香港の方がいらっしゃるので国際交流の観点から香港パーティーを開催したり、仮設住宅で食事会を開いたりもしました。
他にもベンチ作って欲しい、物置作って欲しいってところがあれば作りに行ったり、何でもやってましたね。
もともとCCMNという組織が、香港に本部があるクリスチャンのネットワークで、アジアを中心に30カ国くらいのネットワークがあって、いろいろな国と関わりがあるんです。
ネットワークが広ければ広いほど、人材も増えるし可能性も増えると考えています。
理事は5人で、会員は11人ですね。北は山田町から、陸前高田まで、一つの町に2〜3名規模なので、余り大きなことは出来ないんですけれども。
任意団体だった頃の支援金が主体ですね。あとはこのカフェの売り上げ等から。
実はこれを言うと大変驚かれるんですけど、With You Globalは完全ボランティアというか、人件費を全員もらってないんですよね(笑)。
それだけ聞くと超ブラック団体ですね、こんなに働いてるのに(笑)。
「実質ゼロ円」なんです。スマホじゃないんですが(笑)
ですが、カツカツやっていけているというか、志だけで動いているという。
僕の人件費は山口県の教会のネットワークの方から頂いているので、それで生きているという感じです。
今はWith You Globalの理事長をしているんですけども、もう一つの肩書は「国内宣教師」なんです。フランシスコ・ザビエルじゃないですけど(笑)。
2014年の6月からですね。いろいろ活動していくと、若者が集まれる場所が無いという声が出てきたり、同世代として僕達もそういう場所が無いなと思っていたりしている中で、クリスチャンのネットワークから若者向けの支援をしたいという話が出てきました。
プロジェクトは用意するから、スタッフとして運営してくれないかと。
最初はケーキ屋をやろうかなと思っていたんですが、おいしいケーキ屋さんがすぐそこにあるし。
地元の方と競合したいわけではなく、大船渡市の皆さんと一緒に歩んでいきたいというのがあるので、あまり邪魔にならないようなことをしたいなと思いまして、「若者が集まっていられる場」とそこにあるコーヒー屋がいいかなと。そんな感じで出来た場所ですね。
今は3名ですね。
いいところは、ビリヤード好きが増えたところでしょうか(笑) ここがきっかけでビリヤードにハマられたって方もいらっしゃるんですよ、特に流行らせたかったわけではないんですが(笑)
皆さんのリフレッシュの手段になってるのは良いと思いますね。
この場所は靴を脱いで入ってもらうので、家っぽいというか、くつろげる場所という感じで使ってもらえているかなと。
4年前から子ども達向けの支援「子どもお楽しみ会」も継続しているんですが、その会にもここを使ったりしています。
小さいお子さん連れのお客様が来られた時でも、ここではハイハイさせることも出来るので、こういう場所はありがたいと仰っていただいたり。
ちょっとずつでも地域に必要とされてもらえてるのかなというのが、良かったなあと思うところですね。
大変なところは、やっぱり10代、20代にもこの場所に来てもらうってところで、「若者が集まっていられる場」というコンセプトがあるので、特に学生にも使ってもらいたいなってところがあったんです。
ただ、僕もそうなんですけど高校生の頃ってあんまりカフェとか行かないんですよね。
都会だったら高校生でも気軽に入りやすいスタバ(※スターバックスコーヒー)とかの入りやすい(コーヒーカフェの)チェーン店があるんですけど。
僕の地元もスタバが無いところなので分かるんですけど、カフェでくつろぐとか遊ぶっていう、ここにもともとはなかった新しい習慣を作っていくってのは時間がかかるんだなと思っています。
この街に大学がもしあったら、みんな集まっているんだろうなってのは思いますね。
彼ら(地元の高校生)が言う遊び場ってのは、イオンモールみたいなものであったりとかなんですよね。
本当はカフェで遊ぶって言うことも全然構わないんですけど、先入観みたいなものがありますよね、今までそういう習慣が無かったから。
例え話ですけど、水槽に透明なアクリル板で仕切りを作って、片側に金魚を入れて、しばらく反対側に行けないまま過ごさせてから板を取っても、もともとあった板の向こうには行けなくなるみたいな話があって、それに近いような状態で。本当は行けるのに、諦めちゃって、そこにあるのに手が届かないというか、そういう印象があります。
こっちの高校生って都会の高校生より忙しいって言われるじゃないですか。
「勉強」「部活」「家」って限られた場所で18歳まで過ごしていると、この地域の面白さとか、面白いワクワクするような人たちと出会ってこの街を好きになっていく機会ってのが少ないんじゃないのかなって思ってしまいますね。
「子どもお楽しみ会」っていう子ども支援の活動は月1回定期的にやっていますね。
あとはワトトっていうウガンダの子達と一緒にコンサートをしたり、老人ホームでのボランティア等も続けています。
若者支援っていうのは地域のある意味では投資的な活動だと思っているので、何もしなければ何も変わらないという危惧があって、この地域の10代、20代、それよりももっと小さい子ども達から関わっていきたいですね。
夏とかはキャンプとかもするんですけど、そういうのも子どもたちの方から「やりたい」って言ってくれるので。
2015年はキッズフェスっていうのをやったんですよ。
子どもたちが企画して、子どもたちが店員になって、子どもたちのために祭りをするっていうフェスなんです。リンカーンみたいな言い回し(笑)
イベントでしか使えない通貨なんかも作ったりして、子どもたち向けのイベントとしては大盛況でした。
子供たちには、いろんな可能性があるんだって事を見つけて欲しいし、一緒に挑戦して行きたいんですね。
この町だから出来ないって事はないし、僕達には国際的なネットワークもあるので、海外に行きたいって思っている子も夢を捨てなければ絶対に道はあるし。
今小学生の子達と話しているのが、「将来僕達がチームを組んで、県を飛び出してどこかにボランティアに行きたい」とか。
彼らならではの可能性が広がる発想をしてくれているので、一緒に叶えていければなと思っています。「可能性の翼」をもがないように。
できないできないって言っちゃうと本当に何にもしなくて良くなっちゃうんですよね。この町では大人が「出来るわけないだろ」って言っちゃうんでしょうけどね。僕は絶対にいわない。
オール(全て)です(笑)
食べ物もおいしいとか自然が綺麗とか、人が優しいとか、まあ皆さん仰ると思うんですけれども。
僕は沖縄が大好きで、沖縄の皆さんは優しいし、のんびりしてあったかい雰囲気があるんですね。僕がこっち来てから思うに、沖縄に並ぶくらい皆さん優しい。日本で一番やさしい県、暖かいところは沖縄だと思っているんですけれども、大船渡。ここも素晴らしい。
いちいちもうおばあちゃんが可愛くてですね。僕が若いってだけで喜んでくれるんですよ。学生じゃないのにずっと学生さんって呼ばれてるんですけどね(笑)
沖縄の離島とかに近い雰囲気だと思うんですよね。「船に乗らずに行ける離島、大船渡」みたいな。
こういうこと言ったら怒られますかね(笑)
やっぱりクリエイティブなこと、面白いことをしたいと思ってます。これは個人的に。
もう一つは活動的なところで、関わっている子どもたちと一緒に、地域のために何が出来るかってのを考えていきたいなと思っていて、小学生と中学生といろいろ出来る事は違ってくるとは思うんですけど、自分たちが楽しむのは勿論として、大船渡の子どもたちと一緒に楽しんでいけるように、視野を外に向けるような活動をしていきたいなと思っています。
大船渡を田舎の中でナンバーワンにしていくのは難しいと思っていて、それよりは世界まで視野を広げて、世界の中でオンリーワンを目指したいなと思ってます。
ここのおじちゃん達が自慢気に言うんですよ、「大航海時代は平泉に行くためにみんな大船渡を目指した」って。
なんだ、世界と繋がりあるじゃんって。
でっかい視野で物事考えていけたらなって思いますね。それが結局は地元の人が面白いねって思ったり、市外の人にも面白いねって言われていく事に繋がるんじゃないかって!
ナンバーワンよりオンリーワンで勝負!
瀬知行さんの熱いメッセージ受け取っていただけましたでしょうか?
次回もいわてで活躍する方を引き続き取材していきます。 お楽しみに!!
◇With You Global(大船渡市 市民活動センター内)
http://ofunatocity.com/organization.php?itemid=49