2015.6.25(木)

タイトル「いわてびと」

〜 特集記事第5回 石井重成さん 〜

    

「いわてびと」めっけ!のコーナーでは、いわてで活躍するいわての若者や団体を紹介していきます! 「めっけ!」は、岩手県など東北地方の方言で「見つけた!」「発見!」という意味です。

第5回は、岩手県釜石市に移住し“助っ人職員”として復旧・復興業務に奔走しながら、外部人材を活用した復興支援員「釜石リージョナルコーディネーター(釜援隊)」をプロデュースした石井重成さんにお話を伺いました。釜石の人々自身が地域の良さを見出し、そしてアクションしやすい「まち」をつくるには?日夜戦略を模索する、釜石市役所「まち・ひと・しごと創生室」室長・石井重成さんをめっけ!

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◎石井重成(いしいかずのり) 1986年、愛知県西尾市出身。高校を卒業後、大学進学のため上京し東京の経営コンサルタント会社に勤務。2012年春に、友人の縁で初めて東日本大震災の被災地を訪れ、その風景に衝撃を受ける。同年11月より岩手県釜石市職員として、復旧・復興に関するあらゆる業務に携わりながら、地域の復興支援員「釜石リージョナルコーディネーター(釜援隊)」の立ち上げ・マネジメントを手掛ける。現職は「まち・ひと・しごと創生室」室長。将来の人口ビジョンを見据えた「まち」の戦略づくりに取り組んでいる。

特集【第5回】 釜石の「一歩」、みんなの「一歩」を応援!石井重成さん
1.石井重成さんって?

私は愛知県西尾市という抹茶の産地の生まれで、大学進学で上京したあとは、新卒でコンサルティングの会社に入りました。所属の部署ではコスト圧縮が主なテーマで、顧客(会社)の業務改善を提案するチームにいました。震災のときは東京・勝どきのビルにいて、十何階にいたので結構揺れたなというくらいでした。その時には、自分が将来いわてに移住するってことは全然考えていなくて、おこなったのは職場で募金活動をして日本赤十字社へ寄付することくらいでした。

転機になったのが、2012年の春に宮城県気仙沼市で開催された社会起業家が集まるイベントです。たまたま友達が運営に関わっていたので、会いに行ったんです。

そこで見た気仙沼(東日本大震災の被災地のひとつ)の風景がすごく衝撃的でした。多分人生の中でいちばん大きな影響を受けました。船が地面に乗っかっている風景とか、見渡す限り何も無いみたいなところ…。

一方で、何も無いんだけど、そこには住んでいる人がいて、いろんな苦悩とか辛いことを抱えながらも、屋台村で出会ったおばちゃんおじちゃんと「今は下を向いているけど、立ち上がらないと」って会話した体験が僕の中ですごく大きくて。

それで、これは勝どきに通ってる場合じゃない!と思ったんです。コンサルティングの仕事って、問題を解決することなんですけど、いま圧倒的に問題があるのは都内じゃなくてここ(三陸)だろって。
いま、三陸にいなくてどこにいるんだろう。
気づいたら、そう考えるようになって、会社辞めようと。

(仕事を辞めて被災地に移住することに)迷いが無かったと言えば嘘になりますけど、三陸という場所に出会ってしまったというのと、千年に一度といわれるような震災が起きて、(世界の人口が)70億人くらいいる中でたまたま自分が日本に住んでいて、いま東京を離れて失うものも特にないだろうって。当時は26歳でしたし、半分くらいは思い込みだったと思います。

「とにかく行こう!行かなきゃわかんない」って。

2.石井重成さんのアクションforいわて

★釜石よいさ(おまつり)にて - サイズ調整 ★釜石創生アカデミーの実施風景(市職員むけの勉強会)@議場 - サイズ調整

どういうふうにこの三陸や被災地に関わるか考えている時に、たまたま岩手県釜石市で復興支援をしている団体に出会いました。その団体から紹介してもらい、職員募集に応募して、助っ人職員みたいな感じで釜石市役所に入りました。

最初は(復興計画に関する)説明会でひたすらイスを並べたり、参加者の車の交通整理で棒をふったり、よくやってましたね。並べたイスの総数は千を超えていると思います(笑)
あとは、お便りを封筒に入れる作業をみんなと一緒にやっていまして、職員がやると他の業務もやりながらなので効率も悪かったんです。なるべくみなさんの負荷を下げたいって思い、封筒詰めのような作業は、外部委託するように業務を見直しました。

それから当時、住民や支援者などいろんな人から「(復興に関して)何がどこまで進んでいるかわからない」って言われてたんですね。そのため、例えばいま壊れている戸建が何戸あって、何戸修繕したとか、数値を各部署から教えてもらいグラフにした資料を作りました。それを「かまいし復興レポート」として世に出したのが、入職してか3か月くらいの頃ですね。
それがけっこう反響があって、(釜石に自分が来た)意味があるなってちょっとだけ感じられたんです。
「ありがとう」って言ってもらえて嬉しいし、また頑張ろうって思った瞬間です。

まさに前職のスキルを活かした業務改善ですね。手探りで現状把握をしながら、自分ができることを少しずつやっていったという感じですね。

そうですね。
それから、自分の中での大きな仕事として、釜石で地域づくりを進める復興支援員「釜石リージョナルコーディネーター(釜援隊)」の発足を推進しました。
プロジェクトを立ち上げるにあたって、2012年の年末くらいから、いろんな人に話を聞きにいきまして。今どんなふうに思っていて、どんな問題意識を持っているかっていう話をとにかくヒアリングしました。50人以上はたぶん聞きました。
その中でもっとも大きい問題って何なのかって、突き詰めて考えたときに、圧倒的に「隙間」があることだと思ったんですね。時々に感じる意識や距離、その差みたいなものを自分としては「隙間」かなと。

いろんなところにコミュニケーションの「隙間」があって、よく言われるのが市役所と地域住民の間、あるいは、地域と地域のなかにも「隙間」があって、あとは役所のなかにも「隙間」があります。いろいろな「隙間」があって、そのコミュニケーションの「隙間」を埋める調整役としての存在を作り、その機能を育てていくことが重要だと感じました。

それが「釜援隊」の制度設計を進めていく際の基本的な軸となりました。
準備期間の3ヵ月間、マネジメントスタイルとか隊員の採用マーケティングとか、全体観として何を目指すか議論をし、釜援隊の予算が平成25年3月議会で議決された瞬間は、釜石に来てもっとも嬉しかった瞬間のひとつです。
これは自分のミッションなんだっていうのを感じました。

全国から隊員を募り、釜援隊がスタートしてから2年以上。地域での認知も高まり、ますますの活躍が期待されますね。石井さんは現在もマネジメントに携わっているとのことですが、そのほかにはどんなことに取り組んでいますか?

大きく分けると今の僕の仕事は、一つはまちのビジョンをつくること。もう一つはそのビジョンを実現するためのモデル事業を生み育てること。その二つですね。

地方創生」っていう大きな時代の流れを受け、これまで釜石がやってきたこと、やりたいことを改めて整理する、定量的に分析してみる、そして、現状認識を共有する。
その上で、「このまちはこれで勝負していくといいよね」っていうビジョンを、すでに頑張って活動している人たちだけでなく、その周りの人たちも含めて、描けるような状態をつくるのが今年度の目標です。

そこに行き着くために何をすればいいか設計をしたり、その為にワークショップを何回くらいやろうっていうのを詰めたりしています。

キーワードの1つは、「(地域の)活動人口」ですね。
釜援隊はこれまで地域の黒子役として、いろんなひとたちの活動を応援することによって、まちで行動する人たちを増やしてきました。
最近では、市民有志で運営を行う「釜石○○(まるまる)会議」という、地域のみなさんがやりたいことを応援するための出会いの場だったり、後押しができるような場も生まれ始めています。

外部人材や行政も含めて、釜石で暮らす人たちが仲間としてチームをつくっていく。そして自分事として街を一緒につくっていく。そういった空気感を醸造していこうと取り組まれているんですね。

◎釜石リージョナルコーディネーター(通称:釜援隊)とは◎
「釜援隊」とは、釜石で地域づくりを進める復興支援員の集合体である、「釜石リージョナルコーディネーター協議会」の愛称です。読んで字のごとく、「釜石の復興まちづくりを応援する隊」という意味を込めています。金融・マスコミ・商社・国際協力など多様な経歴をもつメンバーが、自治体・企業・NPO・住民といった地域を支える方々と協力しながら、岩手県釜石市を拠点として日々活動しています。住民と行政、地域と外部支援、そして理想と現実…釜援隊は、まちづくりの中に存在する様々なものの“間(はざま)”をつないでいきます。
釜石リージョナルコーディネーターHPより)

3.石井重成さんの思う、いわてのミリョクって?

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それはもう、いろんな意味で、「隙間」があることです
「隙間」があるっていうことは、自分が何かをやれる可能性も大きいということですし、釜石市くらいの規模のまちで活動していると、いろんな人たちから貰うフィードバックが肌で感じられる。ある種こう、「小さい部品じゃない自分」っていうのを実現する場としては魅力的なんじゃないかなと思います。いわてで、釜石で暮らしてると、自分ができそうなことが相対的に大きい。

あらゆるところに「隙間」があって、その「隙間」は課題だったりもするけれど、自分の裁量で仕掛けることができる。それがミリョク?

そうです。「自分の人生の中で何をすべきか」というミッションを持っていない人はたぶんいっぱいいて、自分も東京ではそのひとりでした。明確なミッションを持っている人は場所や機会に捉われることなく、自身の意思で生きるものですよね。

そこまではいかないけれども、いまの仕事とか、生活に漠然とした違和感を持っていたり、違う世界に飛び込んでみたいと思う人たちにこそ、こっち(いわて)でチャレンジしてほしい。釜援隊もそうですが、そういう機会を提供していきたいなと思います。

石井さんにとって、「隙間」に入ることで得られるものってどんなことですか?

今やっていることって、そんなシャレたことでもなくて。あくせくしてるんですよ(笑)日々あくせくしてて、何が正解なのかわからない中で、いつも悩んでる。
でも大切な仲間がいて、自分を必要としてくれる場所がある。それでいいじゃんと。それ以上のことを考える必要もないのではと思いますし、いまを精一杯生きることが、結果的に、全人的な成長につながるんじゃないかなと。

あとは、時代に向き合っているという感覚はあります
「日本は世界最速で少子高齢化や人口減少が進んでいる」といったニュースを見聞きすると思いますが、それって、都内でサラリーマンをやっているとなかなかピンと来ないんですよね。釜石市の高齢化率は35%くらいですが、仮設住宅の高齢者の割合がそれ以上のところがあったり、まちを歩いていても若い人をあまり見かけなかったり。ここにいると「人口減少」という問題が他人事じゃなくなるんです。

これからは、社会保障や公的機関の財政問題など、いろんな意味で厳しい時代がやってくると思います。そういう時代に馴染むというか、いまだから紡ぎ出すことのできる未来を、私たちの世代が考え、行動していきたい。そこに暮らすのは自分たち自身だからです。こういう感覚は、釜石にきて強くなったような気がします。

4.石井重成さんから、若者へのメッセージ!

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つながろう」ってことですかね。
それぞれ立場とか環境も違ったりするけど、今いわてにいるってことで、つながる理由は他にいらないと思います。
僕もそういう機会をつくっていきたいと思いますし、今いわてにいる若い人たちがつながるきっかけを提供したい。既にアクションされている方もいっぱいいらっしゃるので、ぜひそのような場に参加してみてください。

面白い人たちがいっぱいいるんです。いわてに。

いわてにいる人は「つながろう、仲間になろう」と。
では、これから東北や、いわてに入ろうとしている若者へのメッセージもお願いします。

なんでしょうね…、心の温度が上がった時には正直になればいいと思う。

自然体がいいかなと。

無理して岩手に住んでくれってことではなく、「いいな、いわて行きたいな」とか、「いわてで挑戦してみたいな」って思う気持ちがあったら、その気持ちに素直に自分を委ねてみるといいんじゃないかなって。

いわてを知ってもらったり、いわての人に会ってもらう機会を提供するっていうのは我々の役割ですし、今回お話ししたような地域づくりとかも含めて一緒にやっていきたいと思います。

人の移動によって、その人の幸せとかやりがいとか、ミッション感っていうのが高まるようにしたいですね。

これまで「安定的」と表現されてきた仕事や生き方が揺らぎつつある社会では、自身の価値判断っていうのが今後ますます重要になってくると感じます。自分の軸みたいなものを見つめなおす際に大切なのは、自分の心の温度に素直に従ってみることなんじゃないかなって、そんな風に、思ったりします。

これからも、心の温度が上がった人の背中をポンッと押すような、そんな仕事をしていきたいですね。

いま困っている人や場所があるなら、何かしないと。
その一心で被災地に飛び込み、あらゆる復興関連業務に夢中で取り組んできた石井さん。
さまざまな局面で日々悩みっぱなしだと苦笑する石井さんですが、
釜石の地域課題に真剣に向き合い、耳を傾け、本当に必要な仕組みを追求する姿は、とても頼もしく感じます。
目下のテーマは、外部から移住してきた人も含め「釜石にいま住んでいる人」が挑戦しやすい空気感をつくること、そしてそれをうまく循環させること。
地域のために一歩踏み出すとき、背中を押してくれる存在があることは、きっと励みになります。みなさんも、心の温度に身を委ねてみては…?

 

釜石の「一歩」、みんなの「一歩」を応援!
石井重成さんの熱いメッセージ受け取っていただけましたでしょうか?
次回もいわてで活躍する方を引き続き取材していきます。 お楽しみに!!


◇石井重成さんの紹介ムービー!

連載コラム 東北復興新聞『まちづくり釜石流』
http://www.rise-tohoku.jp/?cat=394

個人ブログ『復興と地方創生のあいだにあるもの』
http://kazz.blog.jp/

釜石リージョナルコーディネーター協議会HP
http://kamaentai.org/

『釜石○○(まるまる)会議』  公式facebookページ
https://www.facebook.com/marumarukaigi