2017.3.8(水)

タイトル「いわてびと」

〜 番外編その17 大槌の魅力を全国に―大槌町・「大槌食べる通信」編集長 吉野和也さん― 〜

    

いわてで活躍するいわての若者や団体を紹介する「いわてびと」めっけ!

※「めっける!めっけだ!」は、岩手県など東北地方の方言で「見つけた!」「発見!」という意味。

番外編では、いつものコネックさんではなく、岩手県庁の若手職員が若者を取材しています!
「大槌食べる通信」編集長の吉野和也さんをめっけ!

DSC02445

吉野和也(よしの かずや)さんは、東日本大震災津波の発生後、東京の会社を辞めて三陸地域に移住しました。吉野さんが大槌町でどんな活動をしているのか。その想いを語っていただきました。
1 大槌との出会い
千葉県出身の吉野さん。現在は大槌町でNPO法人を立ち上げ、「大槌食べる通信」の編集長を務めています。大槌町との出会いはどのようなものだったのでしょうか。

東日本大震災津波から1ヶ月くらいに、ブログやテレビがきっかけで被災地に行ってみようと思い立ち、支援物資を買い込んで陸前高田市へ向かいました。

実際に足を運んでみると、つらい体験をされた方が大勢いらっしゃって、皆さんの姿を見たとき、被災された方の気持ちを全て理解することはできないけれど、そばにいれば一緒に泣いたり笑ったり喜んだりできるのではないか、少しは心を安らげてあげられるのではないかと思い、仕事を辞めて大槌町に移住しました。新しい仕事の1つとして2011年5月から立ち上げたのが「大槌復興刺し子プロジェクト」です。東日本大震災で仕事を失うなど生活が一変してしまった女性たちと、避難所の限られたスペースで「刺し子」を制作することで仕事を創出する活動を行いました。

 

about-concept-fig01

「大槌復興刺し子プロジェクト」(写真提供:吉野さん)
2 NPO法人「アラマキ」と情報誌「大槌食べる通信」
現在の活動である「大槌食べる通信」を始めたきっかけはなんだったのでしょうか。

刺し子プロジェクトが軌道に乗ってきたころ、私は「大槌町復興推進隊」の創設を町へ提案しました。大槌町に全国から復興支援を手伝ってくれる仲間を集められる仕組みが欲しいと考えたためです。私もメンバーとして活動をはじめ、特産品の販路拡大というミッションに挑戦しました。その時、当時の副町長から「食べる通信」を発行してみないか?とお話をいただいたことが、「大槌食べる通信」を始めたきっかけです。

「食べる通信」は、生産者を特集した記事に、その生産者が収穫した農産物をセットでお届けする情報誌で、地域の魅力とおいしい食材を定期的にお届けすることが特長です。準備を進める中で「食べる通信」を復興推進隊員として発行するのが難しいことが分かったので、個人として発行することとし、大槌にUターンしていた倉本栄志さんと「大槌食べる通信」創刊に向け、NPO法人「アラマキ」を立ち上げました。

「アラマキ」には、大槌町発祥と言われている「新巻鮭」と、方言で親戚や血縁を表す「マキ」の二つの意味を込めています。特に、新たな「マキ」をどんどん作っていこうという強い願いを込めています。

3 「一次産業」や「食」に対する思い
「一次産業」や「食」に対する吉野さんの「考え」や「願い」を教えてください。

今の世の中は食べ物を大切にしない風潮があると思います。

理由はいくつもあると思うのですが、作り手のことや、食べ物を作ることの苦労を知らないことは要因の一つだと考えています。例えば自分で育てたトマトであれば、大切に食べると思うのですが、作り手がわからないスーパーで買ったものをそこまで大切に食べないのではないでしょうか。

食べ物には必ず「作り手」がいて、たくさんの想いが込められていることを多くの人に知ってもらうことから、今日の大量消費の社会を変えていきたいと考えています。

地域や社会に課題があるのならば、自ら行動に移していく。そのように動く人を増やすことで、良い未来をつくる一助になれればと願っています。

4 「大槌食べる通信」で伝えたい
「大槌食べる通信」のこだわり、そして込めた思いを教えてください。

DSC02457

「大槌食べる通信NO.02」

「食べる通信」には、紙面の高いクオリティを当然のこととして、そこにどのように付加価値をつけるかということに常にこだわっています。

実は、「食べる通信」を続けていると、どうしても紙面構成が似通ってきます。大まかには、生産者さんがどんな想いで生産しているか、どんな苦労があるか、レシピ、地域の情報などです。最初はよいのですが、購読が続くと飽きてしまう可能性があります。でもそれは読者にも生産者にも大槌にとっても不幸なことです。ですから、読者にずっと楽しんでいただくために、「大槌食べる通信」がどんな「体験」を提供できるかを大切に考えています。例えば、おばあちゃんの家に泊まりながら新巻鮭を作る「体験」など、ここに住む人と繋がる機会を作っています。

 

全国には過疎が進んでいる地域が数多くありますが、大槌町は全国から注目されています。ボランティアで来て、土地の良さを知り、「大槌」を「ふるさと」だと思ってくれる人も増えてきました。そんな人たちにもっとファンになってもらい、そういった人たちを増やすことが、地域の人たちの「自信」につながると考えています。

大槌町の人って「ココには何もない」とよく言うんです。でも、そんな事無い、すごいことがたくさんあるんです。だから、大槌町のみなさんに自信を持ってもらい、まちづくりを変えて行きたい。それが「大槌」で「食べる通信」を発行する理由です。本当にこの土地を応援してくれる人、一緒にこの土地のことを考えてくれる人たちを「大槌食べる通信」を通じて増やしていきたいと思っています。

5 「大槌食べる通信」のこれから
「大槌食べる通信」の今後の展開を教えてください。

ホタテナイト

「ほたてナイト」(写真提供:吉野さん)

現在、「大槌食べる通信」の講読者数は全国の37の食べる通信の中でも10番目くらいで、観光地として有名な地域よりも多くの読者に読んでもらっています。伝える側が多くの人を巻き込んで、地域の魅力やポテンシャルをPRできれば、小さな町でも多くの方に購読してもらえるということが分かりました。

そのため、「大槌食べる通信」の購読者の9割を占める関東圏で、「ほたてナイト」(東京で大槌町のホタテを食べる会)というイベントを開催するなど、今後もこのようなイベントを展開していきます。また、無印良品さんが運営している「70seeds」というウェブメディアと定期的にタイアップして「大槌食べる通信」のPRをしていますが、そのサイトを通じて大槌町の魅力を伝える「大槌寺子屋」のような活動を展開し、大槌ファンを増やしていきます。幸い私の周りには、倉本さんのように人生経験が豊富で色んなキャリアを積んだ人が多くいます。これからもそういった方をどんどん巻き込んで、新たな「マキ」をどんどん広げていきます。

DSC02455

(左:編集長 吉野和也さん、右:NPO法人「アラマキ」代表 倉本栄志さん)
 大槌町で、地元の人たちと力を合わせ、全国に向けて町の魅力を発信し続ける吉野さん。様々なイベントを通して広がった人とのつながりを通して、より多くの人が大槌町を応援する流れが生まれています。「大槌食べる通信」編集長の吉野和也さんの活躍から、今後も目が離せません。

 

「大槌食べる通信」の御案内

HP:http://taberu.me/otsuchi/

Facebook:https://www.facebook.com/otsuchi.taberu/