2025.8.30(土)

いわて若者カフェ 連携拠点紹介記事「いわてユースセンター・ミライト」

    

【拠点情報】

運営:NPO法人miraito(岩手郡岩手町江刈内10-8)
基本開館時間:金 16:00〜20:00、土 13:00〜17:00、日 13:00〜17:00
休館日:月〜木 ※イベント等で変動する場合がございます。
https://www.instagram.com/youth_center.miraito/
上記インスタグラムのスケジュールをご確認ください。

【お話を聞いたのは】

特定非営利活動法人miraito理事長 上田 彩果さん

東京都町田市出身。2017年4月に、学生時代ボランティアで関わっていた岩手県陸前高田市へ
移住されました。その後、NPO法人SETのメンバーとして、キャリア教育事業に従事。2021年4月に岩手県岩手郡岩手町に移り住み、空き店舗をリノベーションした若者の居場所「いわてユースセンターミライト」を運営しています。2025年2月にはNPO法人miraitoを立ち上げ、子ども・若者支援、マイノリティユースへのサポートに力を注いでいます。
そんな上田さんは、サウナと温泉でリフレッシュするのが趣味。週に2回ほど奥中山高原、八幡
平、金田一などの温泉に足を運び、時間をきっちり測りながら心身ともに整えるのがこだわり。忙しい日々の中での大切な習慣になっているそうです。

 

【NPO法人SETの経験を受け継ぐ、地域と若者をつなぐ拠点づくり】

─── 上田さんは「ミライト」設立前、NPO法人SETにてキャリア教育事業のご経験があるとお伺いしています。今の活動につながっていることを教えてください。

上田さん(以下、上田)
SETは任意団体から始まり、関係人口づくりや民泊の受け入れなどを行っていました。2013年に任意団体からNPO法人となり、震災直後の「すぐに何かやらなくては」という状況から、「地域のこと」「自分の未来のこと」について若者が深く考えられるようにと、翌年2014年からキャリア教育事業を開始しました。現在では、いろんな生き方をしている大人たちとの出会いが、若者たちの価値観を広げるきっかけになっています。

「ミライト」にもインターンとして20人近くの大学生が関わっており、彼らと地元の子どもたちが関わる中で、新しい視点や気づきが生まれています。自分もやってみたい、地域のためになりたいという思いを持っていても、自分の中に押さえ込んでしまう子どもたちが多いので、キャリア教育事業の経験を活かして、その思いを引き出すサポートをしています。その最初の一歩として、企画書を書いてもらい、日付を決めたらすぐに行動に移す、という流れを大切にしています。

─── NPO法人miraito設立の思いや、マイノリティユースへの支援に注力する理由を教えてください。

上田)
ここに来てくれる子たちのためになりたい、これがNPO法人miraitoを立ち上げた一番の理由です。これまで、発達障害や不登校、ひとり親家庭の子など、社会的に支援を必要とする若者たちが多く訪れてくれました。県北地域には、福祉的な支援やマイノリティ支援に強いNPOがまだ少なく、専門性がない状態でスタートしましたが、「若者が自分らしく地元で生きていくためには、やらなければいけないことがある」と思い、NPO法人miraitoを設立することを決意しました。地域にとって、社会貢献や居場所支援は今後ますます重要になると感じています。

▲壁にたくさん貼られた付箋には、訪れた若者たちが書いた
「岩手町×ユースセンターでやってみたいこと」が溢れていました。

 

【現在の活動について】

─── 実際に今までどんな相談を受けてきましたか。

上田)
これまで学生団体の立ち上げから、企画づくり、起業や補助金申請に関する相談まで、多岐にわたる相談に応じてきました。たとえば、NPOを起業したいという中学生が訪ねてきたこともあり、じっくり話を聞き、応援する形で一緒に考えていきました。
また、補助金を活用して、出張音楽隊の企画を支援したり、マイプロジェクトアワードに向けて県内高校生の申請をサポートしたりと、実践的な伴走支援も行っています。ミライトには、専門知識を持ったスタッフも多く在籍しており、相談内容によって得意分野の人に繋ぐことも可能です。若者から大人まで、挑戦したい人が一歩踏み出せるよう、全力で後押ししています。

─── 「ミライト」を運営していて、特に印象に残っている出来事はありますか?

上田)
最も印象深かったのは、ある中学生との出会いです。
2022年9月のプレオープン以降、その子は3ヶ月間ほぼ毎日ミライトに通ってくれました。発達の特性を持ち、不安もあったようですが、おばあちゃんに連れられながらも徐々に元気を取り戻し、やがて友達も連れて来るようになりました。勉強にも意欲的になり、進学も果たしました。

その子は今もミライトに通ってくれています。この出来事を通して、「居場所とは何か」を深く実感しました。自分らしさを認めてくれる存在の大切さ、それが本人の人生にポジティブな変化をもたらすことがあるのだと、改めて感じさせられました。

「ミライト」が2025年3月に2周年を迎えた際にも、印象的な出来事がありました。約50人ほどが集まる記念のイベントの場で、初対面同士だった高校生たちが実は共通の知り合いや経験を持っていることに気づき、一気に距離が縮まりました。一戸から盛岡まで広い範囲か
ら集まるメンバー同士が、偶然のつながりをきっかけにネットワークを広げていくという、広域的な交流の力を実感した場面でした。

その出会いをきっかけに、盛岡を含む県北地域地域の高校生7人で構成される学生団体「コネクターズ」が生まれました。運動会やWEBラジオ企画を実施する「コネクターズ」の主体的な活動は、後輩である高校1,2年生にも刺激を与え、「自分たちも何かやってみたい」という意欲を芽生えさせています。若者が若者を動かすロールモデルが生まれた、印象的な出来事でした。

─── 「ミライト」内に自家焙煎珈琲豆店「コーヒージャンキーウエダ」を運営されていますが、上田さんとコーヒーの関わりについて教えてください。

上田)
コーヒーがもともと好きで、盛岡市内の珈琲屋さんで働いた経験から、自分でも焙煎豆を扱う珈琲屋をやってみようと決意しました。単にお店をやるだけでなく、ミライトでの活動にも通じる「多様な経験が説得力を持つ」という考えのもと、活動しています。メインの「ミライト」としての活動だけではなく、自分の好きなことにも本気で向き合うことで、若者にも良い刺激を与え、活動に深みをもたらすことができたら良いな、と思っています。

▲ミライト1Fの「コーヒージャンキーウエダ」。隣では駄菓子販売も行っています。

─── 多様な活動をされる中で、最も大切にしていることはなんですか。

上田)
ずっと大切にしているのは「自分らしさを大切にできる居場所をつくる」ということです。10代は成長と揺らぎが共存する時期であり、周囲からの圧力で根っこが曲がってしまうこともあります。特に地方では、「どうせ自分なんて」「地元なんて」と思い込んでしまうと、その後の可能性が狭められてしまいます。

だからこそ、「ここだったら何を言っても大丈夫」と思えるような、安心感のある第三の居場所をつくることが大切だと考えています。たったひとつの安心できる場があるだけで、他の場所でも前向きになれます。その経験を通して、自分の好きなことや可能性に気づいてほしいと願っています。居場所は、人の未来を変える力があるのだと、日々の活動から感じています。

【連携拠点「ミライト」について】

─── 「ミライト」はどのような場所として若者等に利用されていますか。

上田)
「ミライト」は、誰もが自由に訪れられる居場所として、さまざまな若者たちに利用されています。
広々とした空間を活かし、打ち合わせ、自習、遊び、飲食、イベントなど多彩な使い方が可能です。特に特徴的なのは、目的がなくても来られる場所であることだと思っています。

友達に誘われたり、新聞で知ったり、親御さんに連れられてきたりと、きっかけもさまざま。気負わず訪れることができるため、勉強したい子、遊びたい子、話したい子など、それぞれが思い思いに時間を過ごせるのが魅力です。お菓子をつまみながら談笑したり、学年の違う学生同士で交流したりと、日常の延長として自然に人とつながれる場となっています。

─── 「ミライト」はどんな設備やスペースがありますか。

上田)
「ミライト」は、1階から3階までそれぞれ役割の異なるスペースに分かれており、利用する方の多様なニーズに応えられる環境が整っています。

1階は交流スペースとして、イベントやちょっとした飲食、談話などに使われています。楽器やボードゲームなど、楽しい時間を過ごすための道具もたくさん置いてあります。2階はアクティブスペースとして利用しています。身体を動かす活動や遊びに利用されることが多
く、自由度が高い空間です。そして3階は、自習スペースとして使っています。

落ち着いて勉強や作業に取り組める静かな場所として用意しています。どのフロアにもWi-Fiが整っており、食べ物の持ち込みも自由で、ときには鍋パーティも行われています。世代や目的を超えて、人が自然に集まりやすい、「まちの縁側」のような場です。

▲1F交流スペース。大きく取られた窓際に楽器やレコードが並んでおり、思わずのぞいてみたくなります。

─── 若者が訪れやすいように工夫していることはありますか。

上田)
「ミライト」では、用事がなくても来られる雰囲気づくりに力を入れています。例えば、「勉強をしに来た」「遊びに来た」といった名目で、気軽に足を運べるよう、イベントや駄菓子、コーヒー、楽器など、さまざまなコンテンツを用意しています。これは、何か悩みを抱えていても、いきなり「相談しに来ました」と言える人は少ないという現実をふまえての工夫です。

また、建物自体も、おしゃれでSNS映えする空間になるよう意識しています。インスタグラムも積極的に更新し、見つけやすさ・入りやすさを高めています。スタッフには最低限のコミュニケーション研修を行い、挨拶や話しかけやすい雰囲気づくりにも取り組んでいます。

─── 岩手町の他の団体や行政、企業とどのような連携をされていますか。

毎月第4土曜日に、岩手町内で子ども食堂を開催しており、地域のボランティアや団体と協力しながら、継続的に運営に関わっています。

また、傾聴のボランティアサークルの方々に研修をしていただいたり、地元のマルシェ「復活ごんぼ市」への出店など、若者たちが地域とつながる機会も積極的につくっています。

さらに、金田一温泉の400周年イベントでは、若者が地域の魅力を発信するワークショップや出展を通じて、地域資源の掘り起こしを行いました。こうした活動を通して、「地域の中で若者が役割を持てる場所」をつくり出しています。

▲窓の外に広がる3F自習スペースからの眺めは、
勉強に集中して疲れた目を休めるのに最適な、心地よい風景です。

【カフェマスターについて】

─── いわて若者カフェのカフェマスターとして、どのような役割を果たしていきたいですか。

上田)
若者カフェの連携拠点として関われたら良いな、と考えていたところにお声がけいただき、カフェマスターとして参加することになりました。

これまで岩手町、一戸、二戸、滝沢など、県北地域で若者と関わってきた経験から、このエリアの魅力をもっと発信したいと感じています。沿岸部は東日本大震災をきっかけに多くの人々が他地域から入り、発信もされています。しかし、県北地域は未だ未開の地だと感じることが多いです。

この地域の子ども・若者たちが、自身の地域の魅力を実感しないまま県外に出てしまうのは、もったいないと感じています。子ども・若者たちと一緒に県北地域の豊かさを見つけていきたいです。地元の中にこそ、誇れるものがあると感じられるような体験や出会いを、「ミライト」という場を通してつくっていきたいです。

─── どんな悩みや思いを持っている若者に訪れて欲しいですか。

上田)
結果的に「どなたでも来てください」というのが答えになってしまうのですが、何かをやりたい、始めてみたい、と少しでも思っている若者なら、誰でもウェルカムです。

実際、ミライトには県内外、さらには海外からも若者が訪れています。何かやってみたいけど、どうすればいいか分からない、失敗するのが怖い、そんな気持ちがあっても構いません。「今だな」と思ったそのときに、そっと来てくれるだけで良いです。すぐに相談しなくては、と思い詰めなくても大丈夫です。遊びに来たついでに、自分のタイミングでぽろっと話してくれれば、きっと何かが動き始めます。

世代も地域も関係なく、想いを持った人が集まることで、新しいきっかけが生まれていくのがミライトの魅力です。

▲ミライトの中高生ボランティアで決めた「グラウンドルール」。
何度も話し合いが行われ、決められたそうです。

─── カフェマスターとしての意気込みを教えてください。

上田)
岩手、そして県北地域で生きる豊かさを、若者と一緒に感じ、見つけていきたいと思っています。

岩手には、人の温かさ、伝統文化、美味しい食、そして雄大な自然があります。それらを若者たちの目線で再発見し、発信していくことがこれからの大きなテーマです。自分が教えるというより、むしろ「教えてもらいたい」という気持ちで若者と向き合いたいと思っています。彼らの視点から見える地域の魅力に触れながら、お互いに学び合う関係を築いていきたいと考えています。

【終わりに】

今回の取材を通して感じたのは、「ミライト」が単なる若者の居場所ではなく、一人ひとりの思いや可能性を大切に育む出発点であるということです。気軽に集える空間は安心感を与えるだけでなく、自分のやりたいことを見つけ、形にしていくための小さなきっかけを生み出しています。

若者同士の交流や地域課題をテーマにしたワークショップなどの取り組みは、地域と若者をつなぎ、人や情報が循環する仕組みをつくり出しています。上田さんのインタビューから、若者を信じ、挑戦を応援する強い思いが感じられ、ここで芽生えた交流やアイデアが、やがて地域全体の力となっていく未来が見えました。

私自身も、誰かの挑戦をそっと後押しできる存在でありたい、と改めて感じるインタビューでした。

Writer:菊池 春香(Chris Design)

 

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