2022.12.27(火)

岩手が誇る伝統工芸と音楽の融合 福嶋圭次郎さん

    

何か新しいことをはじめている人、何かを発信している人。そういった人の多くは、何かしら自分なりの「哲学」を持っているように思えます。「自分が大切にしたい哲学」を考え、見つけることは新しいことを始めるときの手がかりになるのではないでしょうか。「いわてつがく」は、そんな思いのもと、さまざまなフィールドで活躍する人たちの「哲学」を紐解いていく連載です。

福嶋 圭次郎(Keijiro Fukushima)

合同会社福嶋圭次郎 kgr harmony

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プロフィール:神奈川県横浜市出身。学生時代から音楽に興味を持ち、演奏よりも音を追及するため、東京電機大学へ進学。日本各地を巡る旅の中で南部鉄器と出会い32歳で岩手県奥州市に移住を決意。南部鉄器で作るエフェクターを製品化し、合同会社福嶋圭次郎を立ち上げ現在奮闘中。

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ー学生時代の福嶋さんは?

学生時代は、楽器を演奏することに興味を持ち、音楽機材に触れている時間が長かったと思います。大学は、偶然何かの記事でエフェクターを作れる大学があると知り、両親の薦めもあって東京電機大学に進学しました。

大学3年の終わり頃、中高時代の友人がバンドで一躍有名になって海外ツアーを行うことを知り、その話に影響されて、自分が作ったエフェクターを販売するため単身アメリカ・ロサンゼルスに行ったりもしました。

※エフェクター:エレキギターなどの楽器とアンプの間に繋いで、音色を変化させる音楽機材

 

ー岩手に移住しようと思ったきっかけとは?

大学卒業後は就職せず、実家の家業である白米の販売業を行っていました。しかし、家業が事業縮小することを知り、自分がやりたいことを探そうと、全国各地を周る旅に出ることにしました。

北海道、青森、岩手と周ってきて、盛岡市の手作り村や、奥州市水沢で南部鉄器を作っている株式会社及富の工房を見学させてもらいました。

南部鉄器の職人が熱せられた鉄を型に流し込むアツい現場を見て、少年のようにワクワクしたのは今でも覚えています。

移住しようと思ったのは、南部鉄器の会社である「及富」の方に自分が楽器を作っていることを話したら「うちで一緒に何かやってみるか」と話をいただいたのがきっかけです。

自分も心機一転、居場所を探していた身でもあったので本当にこの出会いは嬉しかったです。

 

ーなぜ南部鉄器でエフェクターを作ろうと思ったのですか?

現代のエフェクターはアルミ素材が主流です。私はあまりそれに囚われず、透明なタッパや、木箱でエフェクターを作ってきましたが、どうしてアルミ素材のエフェクターが主流なのかを研究していくと、プラスチックや木箱のエフェクターと比較して、中の基盤を金属で囲うことで外部のノイズから守る効果があることを知りました。

そこで思いついたのが、昔テレビで見たことがあった岩手の南部鉄器でした。完成した南部鉄器エフェクターは音色がとても面白く、金属の比重によって音色の重さが異なり、独特な低音を響かせる音色が出せるのが魅力です。

福嶋さんが製作した南部鉄器エフェクター

ー今までの活動で苦労したことを教えてください。

自分が知らない土地で会社を立ち上げて、クラウドファンディングと同時進行で活動を進めていたときは、忙しかったです。さらにその後、2020年1月から販売を始めて「これから売っていくぞ」と思った矢先に、新型コロナウイルス感染症の流行が始まりました。

コロナ禍の影響で時間が余るようになったこともあり、最初は「及富」さんにお任せしていた南部鉄器エフェクターの製造について、自分で作り方を学ぶことにしました。

当時は、毎日工場に行って職人さんと顔を合わせて、色々な話を聞かせていただき、現場でのコミュニケーションを大事にしていました。あの時の経験があったので、自分の限界が広がり、頑張ってこられたと思います。

溶かした鉄を型に流し込む様子

ー福嶋さんが感じた「岩手」の良さとは

ごはんがウマすぎます!

3年前は62キロほどでしたが、物凄くごはんが美味しすぎて体重が増えてしまいました(笑)

時期によって、知り合いの南部鉄器の職人さんが山菜やジビエを持ってきて食べさせてくれることもあります。美味しく季節を感じられる料理が本当に沢山あって、岩手はいい場所だと思います。

 

奥州市は、第二のふるさとだと思っています。本当に感謝していて、お世話になりっぱなしです。もちろん横浜に戻れば、家族や仲の良い友達もいますが、岩手で本気で活動して認めてもらったことが嬉しいです。

今では仕事で東京に行くと、何か落ち着かない部分があります。大人として物事に集中できる場所を考えたとき、岩手の環境が自分に合っていると思いました。

エフェクター内の基盤を作製する様子

ー最後に、何か新しいことへ挑戦しようとしている岩手の若者へメッセージをお願いします。

私が伝えたいことは、少しでも興味があるなら行動してみるということです。

その行動が良かったらどんどん加速していくし、上手くいかなければ辞めてしまってもいいと思います。また、他のことに興味が湧いたら、切り替えて行動すればいいと思います。

そうやって挑戦を繰り返していくことで、自分のやりたいこと見つけていくことが出来ると思います。

「何かしたい」と意識を持っているけど行動に移せない方の後押しになればと思います。

 

KGR HARMONY

 

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