2022.1.7(金)

住田町に住み始めて10年、地域と外を繋ぐ架け橋に  植田敦代さん

    

何か新しいことをはじめている人、何かを発信している人。そういった人の多くは、何かしら自分なりの「哲学」を持っているように思えます。「自分が大切にしたい哲学」を考え、見つけることは新しいことを始めるときの手がかりになるのではないでしょうか。「いわてつがく」は、そんな思いのもと、さまざまなフィールドで活躍する人たちの「哲学」を紐解いていく連載です。

植田 敦代(Ueta Atsuyo)

一般社団法人SUMICA副代表、NPO法人wiz理事

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プロフィール:岩手県盛岡市生まれ花巻市育ち。都内の大学に進学後、リクルートエージェント(現リクルートキャリア)で4年半法人営業を担当。その後、東日本大震災を機に岩手へUターンを決意。何か岩手のために貢献したいと赴任した住田町では復興応援隊として活動。現在は、育休中ではありながら、復興を機に移り住んだ住田町を活性化するため、地域の仲間と協力しながら奮闘中。

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ー住田町に移り住んだきっかけは

高校までは花巻市で暮らし、大学進学を機に上京しました。都内の大学を卒業後、リクルートで4年半営業として働いていました。岩手に戻りたいとは全く思っていませんでしたが、2011年に東日本大震災が発生し、初めて何か地元に貢献したいと強く思い岩手にUターンしました。その後、2012年10月に被災地の後方支援を行っていた住田町に復興応援隊として配属され、同町に移り住みました。

ー当時、住田町ではどんな活動をしていたのですか?

最初は、復興応援隊として住田町の観光協会に配属されました。観光協会では、催事を行ったり、商品開発を行っていました。しかし、仕事をしていくうちに、観光という枠のみで活動していくことが少し窮屈に感じ、通常5年の任期のところ、私は2年で復興応援隊を卒業しました。その後も引き続き、住田町で新たな仕事がしたいと漠然と思っていた矢先、役場の方から集落支援員にお誘いいただきました。私のミッションは、住田町全体が活性化されるようなイベントを行うことでした。

一般社団法人SUMICAの活動について教えてください。

一般社団法人SUMICAは、2015年に住田町の住民の方と一緒に設立しました。町全体の活性化を目的とした住田町の交流スペース「まち家 世田米駅」の指定管理を行っています。この施設は、フリースペースを提供しているだけではなく、古民家のリノベーションや住田町の蔵を活用したイベント企画なども行っています。昼間はコミュニティースペースとして子供向けイベントを行ったり、夜はレストランとして地元の食材を使ったワイン会を開催しています。ワインの生産者を呼んでお話を聞いたり、映画上映を行うなど、老若男女に受け入れられるようなイベントを企画しています。現在はコロナ禍のため、県外からゲストに来てもらうようなイベントは難しいことから、オンラインイベントや、町内の方限定の朝市を毎月開催しています。

地域住民と協力しながら行ったイベントの様子

ーこれまでの経験を通じて、植田さんが思うこれからの働き方について

私が岩手に戻ってきた時は、Wワークや副業というワードはあまり認知されていませんでした。しかし、現在は副業が当たり前となり、どんどん世の中に広がっています。私が複数の仕事を経験して感じたのが、一つの組織でできる役割には限りがあるということです。SUMICAで働いていた時には住田のために、NPO法人wizで働いていた時には岩手の若者のために、個人事業主であればさらに幅広く、仕事ができます。また、余裕を持った暮らしができる女性が増えればいいなと思います。私自身、母親になったことで子供がいるお母さん達の気持ちが少しはわかるようになりました。家の中にいてずっと子供と二人だけだと疲弊してしまうこともあると思います。少しずつコロナも落ち着いてきているので、子供連れが気張らずに外に出やすい企画を「まち家 世田米駅」から発信していきたいです。

「まち家 世田米駅」の外観の様子

ー仕事をする上で大切にしていることは?

住田町を中心に仕事をして10年になりましたが、住田町の人に活動を理解してもらえるよう、地域の方に寄り添うことを大事にしています。また、地域外の視点も忘れないように心がけています。住田町の人と町外の人とを繋げる役割は、私のように他地域で生活した経験がある者だからこそできることだと思うので、これからも住田町と外の人をつなげる役割を果たしていきたいと思います。また、私の仕事は人と人を繋いだり、コーディネートやツアーを行うことですが、地方ではこのような業種に対価が発生する文化が根付いていないので、地域の方に理解してもらえるよう努めていきたいです。

ーこれからチャレンジすることを教えてください。

今は育休中で仕事をセーブしていますが、住田町のワーケーション事業を企画しています。「ラーニングワーケーション」と言って、自分の専門領域で、お互いによく知った同僚などと仕事をする“ホーム”から、専門領域や価値観が異なる人たちがいる“アウェイ”に出ることで、刺激を受けやすい状態を「自発的に」つくり出す越境学習を考えています。

住田町は林業で日本一を目指している地域です。今後は製紙業界・製材業界の若手社員をターゲットとして、研修の一環で木について学ぶ時間も作ることができたらと考えています。併せて震災のできごとを含め住田町の歴史も一緒に伝えて行きたいです。また、震災時に建設した木造仮設を活用した、ワーケーション事業を考えています。現在も手探りですが、テレワークやワーケーションに取り組む団体が増えていく中で、岩手で行うワーケーションの価値をどのように生み出していくか、他県との違いをどのようにアピールすればよいか、日々考えています。

住田町の山で行った森林・木を知るイベント

ー最後に、何か新しいことへ挑戦しようとしている岩手の若者へメッセージをお願いします。

これまで私は何をやるかということよりも、誰と一緒にやるかを重要視してきました。その経験から皆さんに伝えたいのは、自分が純粋にワクワクできるかという感覚を大事にしてほしいということです。もちろん、そこにはお金や待遇という壁もありますが、良い仕事や生き生きと仕事をするためには、本当の自分に向き合えていないと続きません。時には、大きな失敗をしてしまい過去を悔やむことも出てくるかもしれませんが、自分で選択したことを正解にできるのは自分しかいないので、少しでも正解に近づけていくために前向きに次の行動を意識してほしいと思っています。

 

まちや世田米駅:http://machiya-sumita.iwate.jp/?fbclid=IwAR1EjcWidSXjW-0HC001eNovKxl4SrrqR0KAbsFNa6pN1h0Yene88vjdZ1w

TEL:0192-22-7808
住所:〒029-2311 岩手県気仙郡住田町世田米世田米駅13
営業時間 9:00-22:00
定休日 毎週水曜日

 

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