ライター T.Saito
何か新しいことをはじめている人、何かを発信している人。 そういった人の多くは、何かしら自分なりの「哲学」を持っているように思えます。 「自分が大切にしたい哲学」を考え、見つけることは新しいことを始めるときの手がかりになるのではないでしょうか。 「いわてつがく」は、そんな思いのもと、さまざまなフィールドで活躍する人たちの「哲学」を紐解いていく連載です。
嵯峨 恒宏 (さが つねひろ)
NANAMARUNI COFFEE代表
事業内容 カフェ経営、イベント企画運営
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プロフィール:久慈市出身。 高校卒業後、仙台のファッション系専門学校に進学。 仙台屈指のセレクトショップで店長として活躍。 その後、地元久慈でカフェをオープンするためにUターン。 「久慈っぽくない」をテーマに店内の装飾に拘り、月替わりの商品開発を精力的に行っている。 そして、活動はカフェ運営だけではなく、久慈に県内外からたくさんの人を呼びたいとの思いから、「KUJI COFFEE FESTIVAL」「NO STORE’S FESTIVAL」を開催。 若者と地域を繋げるカフェを目指している。
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ー久慈にUターンして、カフェを始めた経緯とは?
これまでの自分を振り返ると『その時にやりたいことをやろう』と思って生きてきた人間だと思います。 当時は、ファッションに興味を持った一人の高校生でした。 何気なく見たファッションニュースで、世界のトップバイヤー10人に仙台のある人物が掲載されているのを見て、「この人と仕事したい」と思い仙台の専門学校に進学しました。 その後、働きたかったブランドで販売員からスタートして最後は店長として働いていましたが、ブランド商品は、人付き合いで気軽に買えるような価格ではないため、お客様とコミュニケーションを取る機会が減り、今後を考えた時期がありました。 そして、自分の基準が大好きなアパレルから、接客に重要視したいという思いが強くなり、お客様との距離が近いカフェ経営をしたいと思いました。
ー店名の「NANAMARUNI」に込められた想いとは?
当時、仙台で地元出身メンバーとルームシェアをしていた時、「いつか久慈で3人揃って商売したい」と夢を語っていたマンションの部屋が702号室でした。 私は、初心を忘れずにという意味でお店の名前を「NANAMARUNI」にしました。
今、他のメンバーは県外にいて、一人は美容師で子供が大きくなってきたので、家族を連れて遊びに来てほしいです。 もう一人は、東京でバンド活動をしています。 久慈に戻って来たときには、このカフェで生演奏をして欲しいと思っています。(笑)
壁に掛けられたドライフラワーと「702」という店名に光が差し込む。 photo by:佐藤彰洋
ー嵯峨さんにとってカフェとは、どんな場所でしょうか?
カフェは、一杯のコーヒーで、人と繋がりお互いを知れる場です。 そして、お店に来ていただいたお客様にサービスを提供することで、笑顔になっていただく仕事だと思います。 私の学生の頃は、久慈には若い人が行くようなカフェがあまりありませんでした。 若い世代にとっては、カフェで休み・楽しむという習慣を知らない人が多かったと思います。 カフェにいる時間は少しかもしれませんが、その場の空間が人と人との繋がりを産み、コミュニティとなります。カフェは地域発展の可能性を秘めている場所だと思います。
テイクアウトメニューも充実していて、広いおしゃれな店内。 photo by :佐藤彰洋
ーカフェでの出会いから誕生したことは?
私は、地域と若者の交流を目的としたイベントとして2020年1月「KUJI COFFEE FESTIVAL」を開催しました。 まだお店を持ってない方がイベントの構成を決めるなど、何より商売の楽しさを知ってもらいたいと思いました。 本気で久慈でお店を開きたいと思っている人の周りには、類は友を呼ぶというわけではありませんが、志を同じくする若者が集まります。 この声に答えたいと思い、第2回を企画していましたが、コロナの影響で大規模なイベントは中止となりました。 しかし、悔しい思いから自分の空間を使って応援したいと思い、「NO STORE’S FESTIVAL」を開催しました。 店舗がない若者や事業者がNANAMARUNI COFFEEや各店舗の空間を借りて営業するイベントです。 結果的には、若者と一緒に協力して運営でき、お客さんにも久慈の街を周ってもらえるイベントになって良かったです。
嵯峨さんが「久慈を盛り上げたい」と思いはじめたイベントです。 当日、約1000人来場しました。
ーカフェ運営をしていく中で、大切にしていることは?
味は人によって好みがあると思います。 苦いコーヒーが好みの人に酸味があるコーヒーを紹介しても心に響きません。 自分にとっての100点がお客さんにとっては100点ではないということは、世の中、コーヒー以外にも多々あると思います。 お客様によって正解があることを理解しなければなりません。 自分中心なお店にならないように、常に自分に言い聞かせて、お客様に寄り添った接客を大切にしています。
自家焙煎をした後、その場でコーヒーを入れている様子。 photo by :佐藤彰洋
今、取り組んでいること、これからやりたいことを教えてください。
「KUJI COFFEE FESTIVAL」や「NO STORE’S FESTIVAL」の様に、 今後も継続して自分のお店からどんどん久慈の魅力を発信して行きたいです。 そして、各地域のイベントに参加したいです。 この前も盛岡のお店からお声をかけていただき、コーヒーイベントを行いました。 少しでも多くの人に『久慈にいいカフェ』があるという事を知っていただける機会を作っていきたいです。
久慈に人を呼びたいと思いから始まり、NANAMARUNI COFFEEらしく自分たちらしい遊び心ある商品を作ろうと思い、月替わりのマンスリー商品をコーヒー・紅茶・フラペチーノで提供しています。 商品開発や写真の取り方などはとても意識しています。 また、今後はBAR NANAMARUNI として 金土だけコーヒーカクテルと、ティーカクテルとオリジナルカクテル を提供する夜カフェを予定しています。
1月限定フローズン「黒蜜きなこ」和テイストな組み合わせで、やみつきです。
ーこれから新しいことへ挑戦しようとしている岩手の若者へメッセージをお願いします。
「世の中の仕組みを知ってからチャレンジして、好き嫌いを言ってください。 」これは、自分の体験談ですが、勝手に自分が嫌いと思った人に限って、表面上でしか相手を判断してない場合があります。 本当の相手を知らないまま嫌いとは言わないようにしてください。 これは人に限らず、物事に置き換えても同じです。 自分の中でちゃんとした根拠を持って判断できる人間になってほしいです。 私も、過去に人を表面だけで、毛嫌いしていたことがありましたが、今となっては後悔しています。 相手をよく理解しないまま語るような人間にはなってほしくないです。
このカフェが、「新たなことを挑戦する若者が集まる場所」になればと話してくださいました。
住所: 岩手県久慈市二十八日町2-21 1F
電話:019-466-7655
営業時間:10時~20時
定休日:火曜日