2025.8.30(土)

いわて若者カフェ 連携拠点紹介記事「ユベントス」

    

【拠点情報】

運営:合同会社OLD NEW(久慈市中の橋一丁目25)

営業時間:昼営業:11:00~18:00 夜営業:18:00~22:00(金・土のみ)
休業日:月曜日
※イベント等で変動する場合がございます。
https://oldnewjuventus.com/

上記ホームページのスケジュールをご確認ください。

【お話を聞いたのは】

合同会社OLD NEW 馬内 広斗さん

久慈市出身。地元の高校を卒業後、東京の飲食店に就職。多様な価値観や人々との出会いを通じて「何かを自分で発信して挑戦したい」という思いが芽生え、フィリピン・セブ島へ短期留学します。帰国後は、地元で起業していた先輩たちのもとで経験を積み、地域に根差した活動を具体化してきました。2022年1月、元いわて若者カフェ・カフェマスターのNANAMARUNI COFFEEオーナー・嵯峨恒宏氏を含む地元の仲間3人で任意団体「OLD NEW(オールドニュー)」を立ち上げ、若者の挑戦を応援する拠点「ユベントス」を開設しました。

そんな馬内さんの活動の源は、サーフィンとサウナです。久慈の海で波にのり、サウナで心と頭をリセットすることで、自分を整えているそうです。このバランス感覚こそが、馬内さんのまちづくりにおける原動力となっています。

 

 

【故郷・久慈市へのUターンと新たな挑戦】

─── 上京後、久慈市にUターンするまでの経緯を教えてください。

馬内さん(以下、馬内)
高校卒業後、私は「一度地元を出た方が良いのかな」という漠然とした思いから、上京し東京の飲食店に就職しました。東京で多様な価値観や人々と出会い、交流する中で、自分の本当にやりたいことについて深く考えるようになり、「自分発信で何かをしたい」という強い気持ちが芽生えました。

東京の仲間のアドバイスもあり、「海外に行って英語を学びたい」という目標ができました。そこで一度久慈市に戻って語学留学の資金を貯め、フィリピンのセブ島へ短期留学しました。セブ島では、1日6時間のマンツーマン授業や寮生活、多世代との交流を通じて、語学だけでなく、かけがえのない多くの経験をしました。

セブ島での経験を経て、「自分で何かを始めるなら、慣れ親しんだ地元で挑戦しよう」と決意し、久慈市へのUターンを決めました。

 

─── 地元で起業した先輩方のもとで経験を積まれたとのことですが、現在の馬内さんの活動にどのように活かされていますか。

馬内)
先輩方からは、現在の活動に直結する多くの実践的な学びを得ました。特に印象深かったのは、「人との関わりを大切にする姿勢」と「事業の拡大に向けた視点」です。

たとえば、NANAMARUNI COFFEEの嵯峨さんと連携したイベント運営では、人とどう接し、つながりを築いていくかを実践的に学びました。

また、多店舗展開を進めるHIBIKI SHOKUDOの青松さんのもとでは、カフェの立ち上げから関わる機会をいただきました。

こうした経験の積み重ねが、現在のカフェ運営や地域活動の礎になっています。ただお店を持ちたいという思いではなく、「誰と、どう関わるか」が活動の中心にあるのは、先輩方の背中を見てきたからこそです。

▲「ユベントス」外観。
「OLD(古さ)」と「NEW(新しさ)」の融合が味わい深いです。

 

【現在の活動について】

─── 「OLD NEW」設立の経緯と、現在の事業内容について教えてください。

馬内)
「OLD NEW」の設立は、地域に新しい価値を生み出そうという思いからスタートしました。カフェ事業を中心にしながら、若者と地域をつなぐ関係人口創出の取り組みを行っています。近々移住コーディネーターに就任する予定で、今はそちらの準備を進めています。

また、山根地区の温泉資源を活かしたイベントや、地域の伝統文化である「山根かぐら」の継承にも力を入れています。市民センターや温泉を会場に、地域の魅力を再発見する機会を提供し、地元の人も、外から訪れる人も楽しめる場づくりを進めています。

─── 「ユベントス」はどのような場所として利用されていますか。

馬内)
「ユベントス」は、元々は空き店舗だったカフェをリノベーションして生まれた、地域の若者が集える居場所です。コーヒーを飲みにくるお客様の他、地元の協力隊や、地域に関心のある若者がよく訪れます。口コミやSNS、メディアを通じて広まり、「何かを始めたい」という若者が自然と集まる場所になっています。

イベントスペースとしても活用されており、最近では写真に興味のある方が主体となって、当店舗で写真展を開催しました。また直近では、性教育の分野に興味のある方が主催のトークイベントが行われました。

こうしたイベントのきっかけは、いずれも些細な会話からでした。来店時のふとしたおしゃべりや、日常の何気ない会話からきっかけが生まれます。「ユベントス」は、若者の「好き」や「関心」を表現できる場となっています。

▲ユベントスを会場に行われた性教育のトークイベント告知画像。
主催者はオランダ視察のご経験があるそうです。

 

─── 「ユベントス」を運営していて特に印象に残っている出来事はありますか。

馬内)
特に印象深いのは、若者たちが自ら「何かをやってみたい」という意志を持って、相談に来てくれる瞬間です。自分たちが作った空間が、誰かの一歩を後押しできている実感があり、「やっていてよかった」と心から思える時間です。

常連さんとの日常的な会話も、実は大切な関わりのひとつであり、日々の積み重ねが信頼関係を育む上で大切だと感じています。地域の中で着実に、居場所としての「ユベントス」が根付いてきていると実感しています。

 

─── 「ユベントス」のリノベーションをクラウドファンディングで行われたとのことですが、苦労とやりがい、そして完成時のエピソードなどがあれば教えてください。

馬内)
クラウドファンディングは、老朽化した店舗のリノベーション資金を集めるために実施しました。電気や水道、備品などに必要な費用をまかなうため、150万円を目標に設定しました。壁や床の張り替えなど、業者さんの手が必要な箇所以外は全て自分たちでリノベーションしました。仕事終わりの20時ごろから深夜2時ぐらいまで、ほぼ毎日作業を続けました。約1年半後に完成したのですが、達成感にひたる間も無くオープンの準備を始めなければならず、当時の記憶は「ひたすら忙しかった」、という印象が強いです。

自分たちでリノベーションを行うことは体力的にも精神的にも大変でしたが、支援者から「応援してるよ」と声をかけてもらうことが多く、目に見える形でつながりが実感できたことが何よりの励みでした。プレオープン当日、多くのお客さんに来店いただき、皆さんとたくさんお話をしました。その時の高揚した気持ちは、今でもよく覚えています。

 

─── 「起業」「地域づくり」の活動において、最も大切にしていることはなんですか。

馬内)
一番大切にしているのは「人とのつながり」です。これまでたくさんの人に助けられ、支えられてきました。もちろん、迷惑をかけてしまったことや、うまくいかなかったこともあります。でも、そんな時に先輩方がアドバイスをくれたり、伴走してくれたことが、自分を育ててくれたと思っています。事業や活動の規模が大きくなるほど、関わる人も増えます。だからこそ、一人ひとりとの関係性を大切にし、感謝を忘れずに行動するよう心がけています。「OLD NEW」や「ユベントス」の運営を通じて出会った人たちとの縁は、何よりの財産です。これからも、人とのつながりを大切にし、地域と向き合っていきたいです。

▲店内のカウンター席。
木材の什器、暖色系の照明が柔らかくナチュラルな雰囲気です。

 

【連携拠点「ユベントス」について】

─── 「ユベントス」はどのような設備やスペースがありますか。

馬内)
ユベントスには、学生や社会人が勉強・仕事をするために立ち寄ることもあれば、イベントやワークショップ、打ち合わせで活用されることもあります。

Wi-Fiや電源、座席の配置なども工夫しており、貸切での利用やレンタルスペースとしても活用されています。店舗の一番奥にあるスペースは、普段はキッズルームとして利用していますが、イベント時には展示室として使用したこともあります。

店舗全体が、若者が初めて自分のイベントを開いたり、展示をしたり、自分の「やってみたい」を試せる場所になっています。また、地元住民と若者が自然に交流できる雰囲気も特徴で、立場や年齢を超えて「地域の居場所」として機能しています。形式に縛られず、訪れる人それぞれが自分らしく過ごせる空間を目指しています。

 

─── 若者が訪れやすいように、どのような工夫をしていますか。

馬内)
若者が気軽に立ち寄れるよう、空間づくりやメニュー、SNSでの発信に力を入れています。カフェとしては、女性の20〜30代を中心に幅広い世代が来店されます。夜間には、仕事帰りに立ち寄り楽しんでもらえるよう、前菜盛り合わせ、ローストビーフやテリーヌなどのコース料理を提供しています。

コーヒーは地元の焙煎店や同級生のショップから取り寄せたこだわりのものを用意し、ここでしか飲めない一杯も提供しています。インスタグラムでは、料理の写真だけでなくイベント活動についても発信し、「行ってみたい」と思えるような工夫をしています。店内はオシャレさだけでなく、それぞれが自分らしく過ごせる空間を目指し、温かさと安心感が感じられる内装を意識しています。

 

─── 久慈市の他の団体や行政、企業とどのような連携をされていますか。

馬内)
「OLD NEW」や「ユベントス」の活動は、地域団体や行政、民間企業との連携によって支えられています。「久慈市アドバイザー」として関わっている外部企業の方や専門家とも連携し、多角的な視点で地域課題に取り組んでいます。商工会や青年会議所とも協働しながら、地域全体を巻き込んだ活動を展開しています。若い人を応援したいという想いを持った方々が、団体や立場の垣根を越えて集まり、連携しています。

▲ZINE(個人出版の書籍)やニッチな分野の書籍を扱い、間借り書店として営んでいる
「6かく珈琲(青森県)」のスタッフさんによる「わくわく書房」のコーナー。

 

【カフェマスターについて】

─── いわて若者カフェのカフェマスターとして、どのような役割を果たしていきたいですか。

馬内)
「カフェマスター」という役割は、ユベントスでの活動の延長線上にあると感じています。元々「いわて若者カフェ」については
NANAMARUNI COFFEEの嵯峨さんを通じて知っており、過去には「いわてネクストジェネレーションフォーラム」にも過去2回出展しました。

昨年、嵯峨さんを含めた数人で「カフェマスター」について話す機会があり、「やってみないか」と声をかけてもらったことがきっかけです。正直なところ、最初は不安もありましたが、「久慈での活動の延長で、岩手全体にこの輪を広げていけたら」という気持ちが芽生え、今回就任という形になりました。

カフェマスターとしては、若者が気軽に相談できる雰囲気づくりを心がけています。形式ばらず、ふらっと立ち寄ってお会計時にちょっと話すくらいの距離感で関われるのが理想です。「地域に根ざした伴走支援」が自分のスタイルであり、そのスタイルを県全体に広げていけたらと考えています。

 

─── どんな悩みや思いを持っている若者に訪れて欲しいですか。

馬内)
「相談」と聞くと少し身構えてしまう人もいるかもしれませんが、ユベントスやカフェマスターとしての自分の役割はもっとラフで自由なものです。何か大きな目標がなくても、「最近こんなことに興味あるんだよね」とか、「誰かと話したくなって」といった理由で十分です。「何かのついで」の関わりの中にこそ、本音ややる気の芽が潜んでいると考えています。関心や悩みの大小は関係ありません。ふらっと立ち寄れる場所があるということが、地域においてすごく大事だと考えています。「話してみたいな」と思った時が、その一歩目だと思っています。まずは気軽に「ユベントス」に来て、おしゃべりしてみましょう。

 

─── カフェマスターとしての意気込みを教えてください。

馬内)
令和7年度はカフェマスターとしての初年度ということもあり、まずは無理せず、しかし丁寧に、活動していきたいと思っています。今年度は久慈市で「いわてネクストジェネレーションフォーラム」が開催されるので、そちらも主体となって動くことになる予定です。

久慈市をはじめ、「いわて若者カフェ」の存在自体がまだあまり知られていない地域も多いと感じています。少しずつでも「こんな場所があるんだよ」と伝えていくことが目標です。また、久慈という一地域にとどまらず、岩手県全体を見ながら、他の地域の若者ともつながりを持ちたいと考えています。「やってみたいけど不安」「一人じゃ難しい」と感じている若者のそばにいて、一緒に悩んだり笑ったりできる存在でありたいです。まずは細くても、確実に届く支援を行っていきたいと思います。

▲使い勝手抜群なフリースペース。
普段はキッズスペース、イベント時には展示室などになります。

 

【若者へのメッセージ】

─── 若者が行動を起こそうとする際に、最も重要だと思うことは何ですか。

馬内)
「ひとりで全部やろうとしないこと」だと思います。もちろん、自分自身の意思やエネルギーは大事ですが、地域で何かを始めるときには必ず人との関わりがあります。だからこそ、協力してくれる人、応援してくれる人を見つけることがすごく大切です。

そしてそのためには、自分の思いややりたいことを言葉にして伝える勇気が必要です。最初はうまく話せなくても大丈夫です。誰かに話すことで自分の考えが整理されたり、新しい視点をもらえたりします。私自身も、周りの人たちと話す中で、自分のやりたいことが形になってきました。だから、まずはラフに話すことから始めてほしいと思っています。

 

─── 久慈市や岩手県で何か新しいことに挑戦したいと考えている若者に、メッセージをお願いします。

馬内)
まずは、何事も「やってみましょう」。

続けることは確かに難しいですが、挑戦しないと何も始まらないし、やってみないと分からないことの方が圧倒的に多いです。特に若いうちは、失敗しても大丈夫だと思っています。周りがちゃんと手を差し伸べてくれますし、立ち直る力もあります。

実際に私の身のまわりにも、失敗を責めるのではなく「一緒にやってみようよ」と言ってくれる大人がたくさんいます。もし「自分にはまだ無理かも」と感じているなら、誰かと一緒にやる選択肢もあります。私自身もその伴走者の一人として、若者が一歩踏み出す場面を支えられたらうれしいです。まずは動いてみよう、話してみよう、そこからすべてが始まります。

▲この空間から、たくさんの人々のつながりが生まれています。

【終わりに】

取材を通して印象的だったのは、馬内さんの「人とのつながり」を何より大切にしている姿勢でした。自らの経験を通じて得た学びを、地元・久慈で若者たちの挑戦の土台に還元しようとする姿勢が、地域の人々を惹きつけるのだと感じました。

「ユベントス」という空間も、訪れる人が肩の力を抜いていられる場所になっていました。挑戦を応援し、ともに悩み、ときに背中を押してくれる存在が地域にいるという安心感は、若者だけでなく地域全体の心強さに繋がっていくでしょう。馬内さんのような存在が、これからの久慈、そして岩手にとってますます必要になってくるのだと感じました。これからの活動も、心より応援しています。

Writer:菊池 春香(Chris Design)

投稿:Co.Nex.Us運営