何か新しいことをはじめている人、何かを発信している人。そういった人の多くは、何かしら自分なりの「哲学」を持っているように思えます。「自分が大切にしたい哲学」を考え、見つけることは新しいことを始めるときの手がかりになるのではないでしょうか。「いわてつがく」は、そんな思いのもと、さまざまなフィールドで活躍する人たちの「哲学」を紐解いていく連載です。
坊迫 舞香(Maika Bousako)
花巻市地域おこし協力隊
ぼうまい村 村長
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プロフィール:滋賀県出身。学生時代にアルゼンチンに1年間留学し、メキシコの物流会社に就職。帰国後は、地方に目を向け地方創生に取り組む企業へ入社。高校生からの夢だった社長になるため、地域おこし協力隊として花巻市に移住。現在は、「ぼうまい村」建設のため奮闘中。
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ーこれまでの活動について教えてください。
将来は外国語を使う仕事に就きたかったので大阪の外国語大学へ進学しました。大学では、3年生の時にアルゼンチンに留学してスペイン語を学びました。帰国してからは、日本で就職活動を行う予定でしたが、就活セミナーやエントリーシートに違和感を感じ、自分には合わないと思いました。学生時代に行きたかったメキシコで仕事をしたいと考え、Googleで「メキシコ 就職」と検索して興味のある企業を探し、Skypeで面接を受けました。希望していたメキシコの物流会社の通訳として採用が決まりました。現地のメキシコ人と同じ給料水準であったため、日本とは異なる低い水準に驚きました。住む家が見つからなくて、メキシコ人とシェアハウスをしたこともありましたし、大家さんの家に住んだこともありました。また、普段日本人が食べないものを食べたこともあり、その影響で1年半で2回入院をしました。体調を崩し仕事を続けていくことが難しくなったことから、日本に帰国し、東京の地方創生に携わる会社に就職しました。そこでは各地域に関わらせてもらい、地方の魅力を知りました。その中でも仕事とプライベートで一番深く関わったのが花巻市の方々でした。将来、村を作りたいと話した時には「坊迫さんが村長だね」と言ってもらえたことがあり、その際ビビッとくるものがありました。町中で若者が活躍している話なども聞き、本気で若者を受け入れようとしている、花巻市に移住しました。
ー坊迫さんが描いている「村」とは?
花巻市がミッションを自ら提案できる地域おこし協力隊の公募を行っていて、私は本気で村を作りたいと花巻市にプレゼンしました。私にとっての村は「遊ぶ」「食べる」「住む」ができることだと思っています。コミュニティ内で循環させる生き方に挑戦してみたいです。これは働き方に関しても言えると思いますが、普通は一つの仕事に就き生活するのが当たり前ですが、私は何足ものわらじを履くように「遊・食・住」の3つの役割を掛け持ちして、循環させる「村」をイメージしています。「遊ぶ」では、田瀬湖のキャンプ場を活かしたアクティビティ。「食べる」では農業。「住む」では、ゲストハウスを運営する予定です。ここでは「日本一整う」というのをコンセプトにして、サウナがあるゲストハウスを作りたいと思っています。私は花巻市に昨年11月から来ていますが、この4か月間でさらに花巻市を知ろうと思い、いろいろなイベントに参加したり、住民の方に花巻市について様々なことを伺って日々学んでいますが、自分が描く村を作るためには、周りの理解と協力が必要だと思いました。そのため、現在は、施工前のリノベーションイベントの準備をしています。まずは、ぼうまい村の良さなど知ってもらう機会が必要だと思っています。このイベントのPRを行ったところ、10人くらいの方が賛同してくれました。イベントに向け当日の企画をしっかりと考えたり、リノベーションに必要な物を集めたりしています。これをきっかけに、少しでも多くの方にぼうまい村を知ってもらい、一緒に活動できる仲間にも出会えたらと思います。また、これから作る村がどのような形になっていくのか興味がある方もいると思いますので、発信していきたいです。まだ、スタートしたばかりですが、いろんな人を巻き込みながらゼロから村を作りあげていきたいと思っています。
山間に囲まれる田瀬湖とこれから作る「ぼうまい村」の様子
ーどうして田瀬湖に「村」を作りたいのですか?
村を作りたいと思ったのは、もっと幸せに暮らしたいと思ったのがきっかけです。現在は、世の中のシステムに自分を当てはめていかないといけませんが、その枠内に留まるのは自分らしくないと思いました。初めて田瀬湖を見たときに、明るく開けている湖で素敵だったので、ここに住みたいと思いました。キャンプやアウトドアが好きですし、滋賀県出身で琵琶湖の影響もあり惹かれたのかもしれません。田瀬湖には、湖、森、炭焼き窯、キッチン設備など、磨けば光る魅力あるものがたくさんあります。冬はワカサギ釣りもできますし、夏は水上バイクの方がたくさん遊びに来ます。この圧倒的な資源力がある田瀬湖を活かした村をここに住む皆さんと作ることができれば、もっと幸せな暮らしができると思います。
ー坊迫さんが大切にしていることは?
メキシコにいた時に、インフラが整っておらず電気やガスも止まり、水もお湯もでない状況でしたが、慌てないで自然に身を任せてきました。そこで学んだのが「無理をしない」「いつも自然体でいる」ということです。上手く取り繕ったりせず、多くを期待しないようにしています。このように思えるようになったのは、今までの海外での経験が活きていると思います。お金を第一に考えてしまうと全部が崩れてしまうので、あくまでもお金は手段であり目的ではないと思っています。それよりも、自分がやりたいことをチャレンジする好奇心を大切にして生活しています。花巻に来てからは、お金はないけど精神的には豊かになりました。
自然を感じる坊迫さんの様子
ーこれからチャレンジすることを教えてください。
自分が経験した海外文化を取り入れ、グローバルがスタンダートという基準で「ぼうまい村」を運営していきたいと思っています。その為に、拠点となるゲストハウス兼カフェを作ります。また、田瀬湖の環境を活かした3つのサウナを作りたいと思っています。1つはメキシコ式サウナを作るので、メキシコの方を呼んでお願いしようと思います。2つ目は、オーソドックスなフィンランド式、3つ目は和風を基調とした日本サウナを作りたいです。熱源を火鉢にしたりなどオリジナルも考えていきたいです。そして、サウナから滑り台で田瀬湖にダイブできる環境があれば、遊び心もあり面白いかなと思います。その他にパッケージデザインを体験し、実際に商品化する計画をしています。趣味でデザインをされている方や芸術系学校に通っている方などターゲットは狭いですが、自分でデザインした商品が道の駅で販売されていたら嬉しいと思います。今はコロナで難しいですが、海外から花巻に人を呼びグローバルに展開していきたいと考えています。
これからリノベーションを行うカフェ兼ゲストハウス
ー最後に、何か新しいことへ挑戦しようとしている岩手の若者へメッセージをお願いします。
学生の頃からロータリクラブの青年部ローターアクトクラブに入り、周りにいる経営者の方から学んだことがあります。それは考えるよりも先に行動する方が大事だということです。自分が動くことによって、周りも自然と協力してくれます。やろうと思えばなんでもできるということを伝えたいです。生きていく中でそんなに難しいことは一つもないと思っています。また、今後は他の地域で同じように活動している方とも繋がっていきたいです。